269 阪急西宮北口駅
そして翌日、2020年1月28日火曜日。
時間割通りの14時35分まで行われた公衆衛生学の講義を終えた剖良は久々に理子と共に帰りの電車に乗った。
剖良の自宅は阪急神戸線の
といってもお互い放課後は学生研究がある上にそれぞれ別の部活に所属しており、1回生の頃から一緒に帰った回数はそれほど多くなかった。
「そういえばさっちゃん、進級試験の勉強はちゃんとしてる?」
「うん、予備校の映像講義のメジャー科は全部見たし、念のためQSのCBT版も一通り解いた」
早い時間帯の
3月上旬の進級試験では俗にメジャー科と呼ばれる内科・外科の全範囲から全300問が出題されることになっており、ここで180問以上正答できなかった学生は原則として留年となる。
正答率が35%を切った問題は不適切問題として全員正解扱いとなるため実際には160問程度の正答数で進級している学生も例年いたが、それでも医学部3回生は確実な合格を目指して日夜勉強を続けていた。
この進級試験は医学部4回生の最後に待ち構えている共用試験CBTの合格率を上げることを目的としているため出題範囲こそ限られているが問題形式や難易度はCBTに準拠しており、剖良は試験対策として国試予備校が有料配信している映像講義を受講していた。
試験対策には映像講義の他に
「流石はさっちゃん、私もQSちゃんとやらないと駄目だなって思ってた所。また勉強会とか開いていい?」
「もちろん。ヤッ君とかマレー君にも声かけてみてね……」
先ほどから当たり障りのない話題でお茶を濁しているが、剖良は今から理子の自宅で何を聞かされるのか心配で仕方がなかった。
思わず理子の手を握ってしまいそうになるのを必死で我慢して、剖良は目的地まで拍動する心臓に耐えた。
西宮北口駅で電車を降りて駅から徒歩5分の住宅街にある理子の自宅に入った時には、時刻は既に15時半近くになっていた。
2階建ての一軒家に入ると家の中には誰もおらず、理子は剖良を2階にある自室まで案内した。
剖良が部屋に入ったのを確認すると理子は内側から部屋のドアをパタンと閉めた。
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