2020年1月 薬理学発展コース
248 気分は年明け
12月25日に壬生川さんと特急今治駅で別れてから再び松山に帰った僕はそのまま冬休みを実家で過ごした。
1年ぶりに実家でゆっくり過ごす僕を母は歓迎してくれて、年末年始は母と共に今治にある母の実家に泊まった。
やはり久々の再会となった母方の祖父母は既に80代前半だが元気に二人暮らしを続けていて、僕が退学の危機を乗り越えて医学生生活を続けていることを喜んでくれた。
父方の祖父は父がまだ幼い頃にアルコール性膵炎で死亡し、父方の祖母もまた僕が生まれる前に自転車事故の頭部外傷で亡くなっているので母方の祖父母にはやはりできるだけ元気で長生きして欲しいと思った。
1月2日から再びドラッグストアでのアルバイトが始まる母に合わせて元日には松山に戻り、地元のスーパーで買ってきたおせちや母の手作りのお雑煮を食べながら寝正月を満喫していると冬休みはあっという間に終わりに近づいていた。
医学部2回生の授業は2020年1月6日の月曜日から早速始まるので僕は前日の昼間には特急と新幹線で皆月市の下宿に戻ることになった。
日曜朝に母が作った朝食を食べ、歯を磨いてから荷物をまとめようと自室に戻ると机の上に放置していたスマホが鳴動していた。
画面を見るとそこにはメッセージアプリを通じてヤッ君先輩から着信が入っていて、冬休み中に何の用件だろうと思いながら僕は電話に出た。
「はい、白神です」
『失礼します、薬師寺龍之介の父親の薬師寺
「えっ!?」
相手はこれまで会ったことも話したこともないヤッ君先輩のお父さんで、なぜその人が今このタイミングでしかもヤッ君先輩のスマホから電話をかけてきたのか全く分からない。
「え、ええ、そうですけど何かありました?」
『息子が昨日白神君の下宿に泊まったと言っているのですが、それは本当ですか』
「昨日ですか? いえ、僕は年末年始は松山の実家に泊まってて今日下宿に帰る所なんです。なので何かの間違いかと……」
『そうですか、ありがとうございます。突然お電話してしまい誠に失礼しました。では切ります』
お父さんはそう言うとさっさと通話を切り、僕は突然の電話に呆気に取られていた。
ヤッ君先輩には僕の電話番号は教えていないのでお父さんが僕に電話しようとすれば必然的に先輩のスマホを借りてメッセージアプリを使うしかないが、それにしても一体何があったのだろうか。
「塔也ー、そろそろ準備しないと特急に遅れるわよ」
「あ、ごめん。今すぐ荷物まとめるね」
ドアの向こうから母が準備をせかしてきて、僕も時計を見て慌ててトランクに荷物をまとめた。
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