247 一つの関係の終わり

 最後のキスは断られてしまったが、それでも恋人である理子とクリスマスにコンサートに行けて雅人は純粋に喜んでいた。


 十三駅で宝塚線に乗り換えて自宅の最寄り駅である阪急川西能勢口駅で降り、自室に戻って荷物を片づけていると誰かからスマホにメッセージが届いていた。


 相手は先ほどまで話していた理子で、雅人は慌ててスマホの画面を開いた。




>柳沢君、今日は一緒にコンサートに行ってくれてありがとう。本当に楽しかった。


>さっきはひどい態度を取ってごめんね。柳沢君にキスしてって言われると思ってなかったから驚いちゃった。


>今度から柳沢君がそういうことをしたいときは我慢するから、気にしないで言ってね。


>それじゃ、お休み。また大学でもよろしくね。




 メッセージに記されていた一文を読んで、雅人は自分の中で何かが砕ける思いがした。



 理子にとって、自分とのキスは「我慢」しなければならないほど苦痛なものだったのだ。




 雅人の脳内で、ここに至るまでの理子とのすれ違いと先ほどの彼女の行為とメッセージの内容が完全につながった。



 両目から涙を溢れさせながら、




>メッセージありがとうございます。


>付き合っていく中で先輩に我慢をさせてしまうなら、俺はもう恋人ではいられません。


>これまでありがとうございました。


>先輩のこと、俺は本当に好きでした。




 必死でメッセージを打ち込んで送信すると、雅人は自室のベッドに倒れ込んで号泣した。

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