112 気分は謝礼金
大講堂前のロビーに戻るとそこではヤミ子先輩と剖良先輩が受験生や保護者の入試相談に乗っていて、昼寝を終えたらしい黒根さんは再び畿内医大の過去問の解説講義を開講していた。
それから1時間ほどでオープンキャンパスは閉会となり、僕は他の参加学生と同様に入試広報センターの職員さんから謝礼金として5000円を受け取った。
「お疲れ様です、白神先輩。先輩はこの5000円何に使われます?」
松島先生による総評と参加学生のコメントが終わり、大講堂を出た所で僕は道心君に話しかけられた。
「うーん……まあ、当面は貯金しとくかな。いつか彼女ができた時に先立つものがないと困るし」
マレー先輩と美波さんの関係を見て、恋人と付き合うのは楽しいことばかりではないということは何となく理解できていた。
北辰精鋭予備校の答案添削のアルバイトは3月以降ずっと続けていて毎月3万円~4万円の給与が銀行口座に振り込まれていたが、生活費は仕送りから全額工面するようにしてバイト代には手をつけずに温存できていた。
「ええーっ、白神先輩って恵理ちゃん先輩と付き合ってるんじゃないんすか!? 俺、その件でマレー先輩にこっぴどく怒られたんすけどごふっ」
「チャラミツ君、まだ教育が足りないのかなあ」
道心君の隣で騒ぎ始めた計良君に対してヤッ君先輩が背後から首を締め上げた。
「あははは、研究医生同士仲がいいみたいで最高だねー。白神君を見習って私も彼氏ができた時のために貯金しとこうかな」
「ぜひぜひ、俺ならいつでもお相手になりんぐぐぐぐぐ」
「……殺してもいい?」
性懲りもなくヤミ子先輩にアプローチしようとした計良君の首筋を今度は剖良先輩がつねり上げた。
そのまま成り行きで研究医生7名(僕・ヤミ子先輩・剖良先輩・ヤッ君先輩・計良君・黒根さん・道心君)で夕食に行くことになり、駅前の居酒屋で楽しく盛り上がった。
3回生3名の本日のバイト代(計15000円)は瞬く間に飲み会の代金に消え、僕も同じ立場になったら迷わず後輩におごろうと心に決めた。
後輩3名にも色々な話を聞くことができて、マレー先輩が僕に優しくしてくれるように僕自身も後輩と仲良くできる機会は大事にしていきたいと思った。
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