108 気分はなぜここに

 2019年7月14日、日曜日。時刻は昼の14時頃。


 畿内医科大学医学部のオープンキャンパスは引き続き開催中で、今は16時の閉会に向けてキャンパスツアーの午後の部や担当者を交代しての入試相談会が行われている最中だった。


 そんな中で僕がいるのは図書館棟地下の学生食堂で、既に昼食の時間帯を過ぎているので食堂内にはほとんど人影がない。


 そしてテーブルの向かい側に座っているのは……



「まれ君は大学の食堂が物足りないって言ってたけど、意外とボリュームもあっておいしいのね。まあ私も単科大学しか知らないからかもだけど」

「そうですか……」


 微生物学教室の物部微人先輩、通称マレー先輩の婚約者であるところの宇都宮うつのみや美波みなみさんである。


 美波さんは僕の目の前で遅めの昼食(A定食500円)を口にしており、僕は2時間ほど前にオープンキャンパス委員に支給されるお弁当を食べていたが今も付き合いできつねうどん(350円)を食べていた。



「さっきはごめんなさい。本当なら私はここにいるべきじゃない人間なんだけど、まれ君の様子がどうしても気になっちゃって」

「まあ別の大学の学生だからオープンキャンパスに来てはいけない訳ではないので、それは気にしなくていいと思いますよ。ただ、いくら婚約者でもあまり先輩の人間関係には干渉しない方がいいかと……」

「そうよね。……自分でも、頭では分かってるんだけど」


 以前から思っていたことを伝えると美波さんはしゅんとした感じでうつむいた。


 こうして第3者の立場で話している分には大人しい美女なのだが、マレー先輩の前だとどうしてあれほど暴走してしまうのだろうかと不思議に思った。

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