97 気分は厳しい課題
「お疲れ様です。以前から松島先生は独特な視点の持ち主だと思ってましたけど今月の研修も面白そうですね。BLSの例にはすごく感銘を受けました」
「あの人は試験で変な問題ばかり出すから敬遠している学生も多いが、微生物学の教授をやりながらわざわざ学生教育センター委員や入試広報センター長を兼任してて教育に関してはとてもモチベーションの高い人だ。俺は元々研究に興味があっても教育にはそこまで関心がなかったんだが、松島先生の背中を見ていると俺も将来は医学生の教育を真剣にやりたいと思う。ところで……」
会議室のドアの前まで歩いた所で先輩は僕に呼びかけた。
「白神君。さっき渡されたグラム染色の手順だが、まさかインターネットで調べれば答えが分かると思ってないだろうな」
「えっ? いや、そんなことは……」
100%とは言えないが割と図星だった。
「その課題は俺自身2回生の時に同じことをやらされた。助教の先生が今の俺の立場で指導してくださったんだが、これがもう大変だった。基本的な手技の意味は医学書を読めば分かるんだが細かいテクニックの意味まで全部正確に説明しないといけなくて、当然そんなことはインターネットで調べても分からない。2回生の4月に課題を出されて最終的に合格を貰ったのは6月の終わり頃だったよ」
「そ、そんなに苦労を……?」
今月は平日の拘束が少なくて楽そうだと思っていたが実際はその真逆なのかも知れない。
「まあ白神君はまだ微生物学の研究医を目指すと決まった訳じゃないから、最終的に自力で全部分からなくても何とかなるとは思う。ただ、決められた手技にどういう意味があるかを常に考える習慣は将来的に役に立つから微生物学に興味がなくても今月は頑張ってみて欲しい。とりあえず今月の土曜日の午前中は毎週グラム染色に立ち会って貰おうと思うんだが、それでいいか?」
「はい、ぜひお願いします!」
それからマレー先輩と一緒にグラム染色の手技の冊子を見て、事前の身だしなみの整え方を具体的に教えて貰ってから解散した。
今の時点ではグラム染色の手順さえ理解していないが土曜日に備えて事前に下調べをしておこうと思った。
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