46 気分は女の敵
話はそこで一区切りになって、連休明けからは午前の講義が終わったら一緒に学食に行ってお弁当を食べて放課後は一緒に図書館や生理学教室で発表に向けての調べ物をすることになった。
壬生川さんの大学デビュー(?)計画に協力するお礼として彼女は5月中の平日と土曜は毎日お弁当を持ってきてくれて、今日のカラオケ代もおごってくれることになった。
それからジャッカルのランチセットを食べて3時間を使い切るまで一緒にカラオケを楽しんで、その日は解散となった。
壬生川さんは1階に下りると自動精算機で料金を支払ったが、彼女が持っていた数種類のクーポンを併用した結果支払い金額が2人合わせて500円ちょっと(3時間パック×2とランチセット2人前)になって僕は驚愕した。
「何というか、恐ろしいぐらいの割引だね」
「ジャッカルはヘビーユーザーには色んなクーポンをくれるから白神君も通ってみるといいわよ。複数人で行けばその分だけ利用時間がたまるし」
「ははは、また考えとくね」
「あれっ、白神君?」
店舗の入り口で壬生川さんと会話していると、2階へ続く階段から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ヤミ子先輩! それに剖良先輩も」
2階からちょうど下りてきていたのは病理学教室の
「お久しぶりー。今日は誰かと来てたの?」
「ええ。あっ、えーと……」
壬生川さんと来ていたことをどうごまかそうかと考えて振り向くと、彼女はいつの間にか店内から姿を消していた。
おそらくヤミ子先輩の声が聞こえた瞬間に
「ちょっと友達と来てまして。もう帰りましたけど」
「なになに、もしかして彼女とデート? この前カナちゃんを泣かせたばっかりなのに白神君は女の敵ってやつかな」
ニヤニヤ笑ってそう言うヤミ子先輩に剖良先輩も何かを考えている様子で、
「一瞬だけ姿が見えたけど、あの女の子どこかで見覚えがあるような……」
と言った。
「えーっ、やっぱり女の子!? このこのー」
「すみません、ちょっと用事があるので!」
悪ノリし始めたヤミ子先輩から逃げるように、僕は軽く頭を下げると自動ドアから退店した。
明日から同級生どころか3回生以上にも悪評が広まりかねないと思った。
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