(ボツ)キャラクターの動きに「孤」はあるか?

 ディズニー、アニメーションの12原則で、こればっかりは小説に使えないなと思ったネタを紹介しようと思います。

 キャラクターの動きが、円弧(Arc)になっているか? というものです。




 試しに水がなみなみと入ったコップをもって、水をこぼさないように上下させてみてほしい。そういった直線的な動きでは「肘を立てたり」「腋を締めたり」不自然な動作になるだろう。次に真っ直ぐな机の縁をなぞるように、コップを動かしてみてほしい。手首を返したり、肘に不可がかかるはずだ。


 直線的な動きは「不自然」で苦痛をともなう。

 まずこれを理解していただきたい。


 生物、物質の動作は、そのほとんどが曲線を描く。3D、2D問わず、アニメーションではこの曲線の動きを意識することで、安心して見られる動きにすることが出来る。


 一見ポージングが上手なアニメーターでも、中割を作らせると、多少はガタつきはじめるものだ。そこで目や鼻先などの軌道を確認して、その円弧の動きが途切れていないかをチェックする。


 では、先に述べた動作に使ったコップを机の上に置いて、腕を自由に動かしてみてくれ。腰から始まり、背骨、鎖骨、肩、手、全て円の運動をしていることがわかると思う。

 これが生物の動作の基本で、抜いてはならない部分だ。


 ただし、この運動には例外が存在する。直線的な動きというのも存在する。


 それはどういった場合かというと、非常に力強く、素早く動くときだ。

 押しのけると言った動作。持ち上げるといった動作。

 そういった場合、円弧の動きではなく、直線的な動きになっているはずだ。

 (細かい部分で見れば円弧なのだが、印象としては直線になる)


 物体の速度感を出したい場合、かえって直線的に書いたほうが効果的で、観客に伝わりやすい。なのでそういう時は円弧を平たく押しつぶしたようにする。

 そして、タイミングをクイックにして、力、速度を表現する。


 もし意図せず直線的な動作に見えることがあれば、それは演出ないし、フレーミングやレイアウト、撮影の仕方に問題がある。


 少し想像しづらいとは思うが、カメラが真正面、あるいは真横からキャラクターの動作を映してしまい、変化に乏しい直線的な動きに見えてしまったり、突然画面から動きが消え失せるということが起こる。


 例えば……剣を縦に振り下ろすシーンで、キャラの横にあるカメラを動かしキャラの真正面に回るのを想像して欲しい。剣の動きの円弧がなくなり、ものすごい平面的な見え方になるのが想像つかないだろうか。


 アップにして一瞬、剣を力強く下ろすワンカットを映すなら、別にそれでも良いのだが、クワをゆったりと畑に振り下ろしている、のんびりとしたシーンを撮るのが監督の意図だったらどうだろう?


 キャラが何をしているか、とてもわかりづらくなると思わないか?


 PIXERのような一流どころでも、こういった問題は度々起こる。

 なので、作業が行って戻るということが、現場では往々にして発生するものだ。


 まとめよう。


 生物、物体の動きは円弧を描く。


 速度が増せば、円弧は直線的になる。


 持ち帰って欲しい知識は、この2点だ。

 以上になる。

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