キャラクターは「演出」の加護を受けているか?

 君が登場させたキャラクターは、「演出」による加護を受けているか?

 

 よく映像作品などで、「演出」という言葉を聞くとおもう。

 さて、この演出とは、何をするのだろう?


 結論から言うと、要素を強調して提示することだ。

 さっぱりわからないと思うので、具体的に説明しよう。


 例えば怪獣の「巨大さ」を演出したい。となった場合を考えてほしい。

 怪獣の大きさを比較するものがまったく無い場所に、怪獣を出したらどうなる?

 どうやって表現する?高さ200メートルですと数値を言うだけで、その怪獣がどれだけ大きいのか、それが想像できるか?


 正確な数値を出すことより、「普段見上げているビルより高い」とか、「ニュース映像で見る怪獣の大きさときたら、周りのビルがまるでオモチャみたいに見えた」などと描写したほうが怪獣の大きさが伝わりやすい。

 これが演出の加護を受けるということだ。


 大きさを表現する「演出」がここにあるのだ。

 逆に小さいものを表現するなら、見下ろしている様子や、周りに隠されてよく見えないだとか、そういった表現をすれば良い。


 この「演出」は、現実世界に存在しないものの実体感や、普段手にとることがないモノを、リアリティをもって読み手に感じさせることができる。


 普段触ることのない鉄砲。型番なんか言われても、読み手はそれがどういうものか、想像できないだろう。かといって行方不明者の捜索願や紛失届のように、その特徴を箇条書きみたいにしてクドクド書くのもナンセンスだ。


 それが世界において、どういう役割を果たすのか?

 読み手はそれを知りたいのだ。


 探偵の愛銃についての描写に「演出がない」場合、こうなる。


 俺の愛銃M1911A1コルトガバメントは、.45ACP弾を使う自動拳銃だ。装弾数7発。重量は1.1キロ。現代の拳銃に比べれば連射性、装弾数は劣悪だが、その威力は現代でも通用する。第二次大戦中の兵士に「ハンドキャノン」なんてあだ名がつけられるくらいだ。オレはこの相棒を自身のホルスターに滑り込ませると、上から隠すように、コートを羽織った。


 私だったらこの文章を見た瞬間にブラウザバックするだろう。

 まったく演出がない描写を見ると、この話が面白くなる期待が持てないからだ。


俺は愛銃のM1911A1コルトガバメントを持ち上げる。ズシリと重い。コイツは100年以上前の骨董品だが、その威力は「ハンドキャノン」とあだ名されるほど強力だ。

 以前トラブルに逢った時は、元ボクサーの筋肉ムキムキの悪党を、たった一発でKOした。俺はこの相棒を自身のホルスターに滑り込ませると、上から隠すように、コートを羽織った。


 銃の名前を書くなら、その銃が他のありふれた銃と比べて、何が違うのか?この話でどういった活躍をするのか?予感の一つくらい読み手に与えるべきだ。

 上記の場合、後者では銃の描写に、「威力」の演出を加えた。


 それをしないなら、「愛銃をホルスターに入れた」だけで十分だ。

 後々の銃撃シーンなどで説明を入れた方がいい。


 ここまででなんとなくわかっただろうが、演出がオブジェクトにするべきことは、それが他と何が違うのか?「区別」して強調することだ。

 それをしないなら、一文を消しても伝わるので問題がない。

 つまり、無駄な描写だ。


 演出の意味と目的は厳密に決まっている。

 要素を強調して提示することは、雰囲気、キャラクター、動作、表情、感情、これらを作者の意図する通りに、読み手に伝えることを目的にしている。


 原始人が見ても間違えようがないほどに、明確に提示することだ。


 剣を振るアクションなら、棒を振り回すように見えないように。

 キャラクターが悪党なら、善人に見えないように。

 怒っているなら、それが悲しんでいるように見えないように。

 怖く感じてほしいなら、楽しく見えないように。


 これが「演出」だ。


 正しく演出すれば、読み手は間違いようがなく、抵抗感なく世界を理解することができる。服を着るように、その世界に入って楽しむことができる。


 怖いキャラが出てくるホラーなシーンは夜や暗い場所で演出する。

 

 ジェイソンが婚活するギャグモノを書くなら、小春日和のラベンダ―畑に登場させてもいいが、彼は夜、深い山や森の奥のキャンプ場、クローズドサークル等、重苦しい雰囲気で出てくるのが普通だ。


 葬式のシーンには雨を降らせる。

 キャラクターが滅入った雰囲気を出すため、涙を想起させるためにそうする。

 逆に死を乗り越えるなど、プラスの印象を持たせたいなら、青空をだそう。

(バイオハザードヴィレッジのラストを思い出して欲しい)


 小さいキャラクターは目線を下げ、一人称で迫らせる。

 大きいキャラクターならその逆で、頭上から獲物をみさせて、圧倒的優位、優越感を演出する。登場人物たちは、気づかないが、そこにいる等だ。


(視点の表現はセンス・アイデアが必要なので、特に気にしないでも良い。)


 また、シルエット演出も有効だ。

 シルエットと言っても挿絵をかけと言う話ではない。


 ここでいうシルエットは、動作を浮かび上がらせるという意味だ。

 振り上げて居る動作、走っている動作だけを見せる。


 だが詳細がわからない。誰なのか?謎めいた雰囲気を演出する。

 要素としては「わからない」事を強調するのだ。


 ここで気をつけたいのは、演出する要素は「ひとつ」に絞ることだ。


 演出は複数の要素を取り上げると、読み手の集中力や創造力が、要素の数だけ切り分けられてしまう。複雑な演出は、読み手のお話に対する集中力をごっそり失わせてしまうのだ。そして「よくわからない」と思われてしまえば、その時点でブラウザバックされてしまう。


 繰り返しになるが再度提示しよう。

 キャラクターの受ける「演出」の加護の極意は何か?


 それは原始人が見ても間違えようがないほどに、「要素」を明確に提示する事だ。


 

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