第18話 終わりの始まり
私は、街を駆け抜けた。少しでも早くそこから逃げ出すために……。
異常なほどに人と出会うことがなく、奇妙に感じたが、まずは家に戻りたいと思った。
アメが戻って居るかもしれないし、何より大切なものはすべて残したままだから。
(……アメに会いたい。けれど、まずは家を遠巻きに確認しよう、きっと私を捕まえようとする近衛兵がいるかもしれないから……)
町長の家から私の家は少し離れている。
1番近道から行きたいがあそこは人通りが多いので、人がまばらな裏路地から家を目指した。
しかし、裏路地は人は少ないが普段なら治安が悪い雰囲気の場所のはずが、なぜか今日は人がいない。
むしろ、町長宅から出てずっと人に会わない。その奇妙さになぜか私は嫌な予感がした。そして、その予感は当たってしまった。
なんとか、裏路地をもうすぐで抜けられる場所までついたあたりから焦げ臭い臭いが漂ってきたのだ。
そして、それと同時に煙が立ち上っていた。
その煙を囲むように街の人々が集まって叫んでいる。
「『カケラ』を殺せ!!『ツガイ』をもたない魔女を焼き殺せ!!」
何が起きているのか最初あまりの事態に私は理解が追いつかなかった。
「殺せ!!」
「『カケラ』を異端者を殺せ!!」
自身に向けられた謂れのない差別と暴力的な言葉。彼らの多くは若い『ツガイ』達であの狂った王太子とその『ツガイ』に心酔している連中だ。
奴らは手に松明を持ち、私の家にその火を投げ入れていたのだ。
(私が、貴方達に何をしたというのよ……ただ、『ツガイ』を持たない『カケラ』に偶然生まれただけ。この世界の常識の外側に生まれ落ちてしまっただけ……私はただ静かに暮らしたかっだけ。それだけなのに、なぜ私が何もしていない人達に憎まれて、ついには大切な物まで壊されないと行けないのか……)
真っ赤に燃えて行く私の唯一の帰る場所。ここだけは失いたくないと最後に願っていた場所。
パチパチと音を立てながら真っ赤な炎に包まれていく。
あそこにだけこの世界への唯一の大切な思い出が溢れていた。
逆に言えば私の大切なものは最早あそこにしか存在しなかった。
「そうだ、魔女の家を皆で燃やし尽くせ。魔女に加担した隣の家も全て全て正義の裁きを!!」
悦に浸りながら、その片側に自身の『ツガイ』を抱きながら叫ぶ王太子の姿が見えた。
王太子の顔がメラメラと燃え上がる炎を見ながら高笑いをした瞬間確かに私の中でなにか最後の糸がプチりと音を立てて切れたのがわかった。
「もういい、こんな世界はいらない」
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