第7話 王太子殿下と差別

王太子殿下……。


この国の中で、『カケラ』である私に親切な人は本当に極わずかだがもっとも私を嫌悪している人物のひとりが彼だった。


『カケラ』は今までの慣習ではその時の王太子と形式だけだが婚姻するのが決まりとなっていた。


それは、今の私のように差別を受ける『カケラ』を王族が保護する必要があったからだと推測している。


なぜ保護する必要があるのかは定かではないが、多くの書物の中で『カケラ』は王族の保護下に必ずおかなければいけないと記されていた。


しかし、その慣習を破り『ツガイ』だけを愛しているので『カケラ』など娶らないと宣言したのが今回の王太子クリストファーだった。


今までもあくまで保護が目的で、そこに愛などはないのだがそれでも『ツガイ』が悲しむからと突っぱねたのだ。


それについて、現国王陛下は苦言を呈してなんとか私との婚姻も進めようとしたらしいがすぐに病床に伏してしまい現在までなされていない。


私は王太子殿下に対して異性としての感情は抱いていない。


一度だけ直接お会いした時は確かに金髪の髪も澄んだ青い瞳も美しい人ではあると思った。


しかし……、


『お前のような汚らわしい『カケラ』のせいで私の『ツガイ』が苦しむことなど許さない』


と憎悪と嫌悪を隠さない言葉と眼差しを向けられたのでそんなものを抱く方がおかしい。


この王太子殿下の態度は『ツガイ』を貴ぶこの国では賞賛された。


『むしろいままでの王族が『カケラ』をなぜ保護したのか』『『ツガイ』を最優先するのが当たり前だ』と若い層を中心に現在も支持されている。


そして、未だに王都に住んでいる私を自分に未練があると誤解して目の敵にしているということも知っている。


けれど、『カケラ』である私が新しい家を買うことは難しいため、この店舗兼住居を失うことは死活問題なのだ。


持つ人は持たない人の苦しみに無関心だ。


好きで出て行かないのではなく出ていけないということをあの人が理解する日はおそらく来ないだろう。


王太子を信奉する人達が、定期的に私を誘惑しようとか少し暴力的な方法で追い出そう来る場合があった。


だからアメもそう言う人なのかもしれないと思った。


「……なるほど。約束が守られていないようだね」


「約束??」


私の問いにアメが想像と違う言葉で返したので思わず眉を顰める。アメは穏やかな笑みを浮かべる。


「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」


「……」


アメがなぜそんなことを言ったのかその時の私はわからなかった。けれど私はアメを追い出すことは一旦保留にしようと思うほどにその言葉には破壊力があった。


そうして、私とアメの奇妙な生活が始まることになった。

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