第4話 嵐の日の真相(隣人視点)

「そういえば、サリー、回覧板のことなんだけど……」


「ああ、もちろん、あの家は抜かしたわ」


クスクスと笑いながら入れたてのお茶を飲む僕のツガイ、サリーは隣に店を構えているの彼女が嫌いだった。


この世界ではツガイが当たり前だ。その中で極まれに生まれてくるは異質な存在だった。


学園で習った話だといままでのは全て王家に嫁いでいたそうだが、今回のされずそのままになっている。


だから、サリーも含む多くの国民は、王太子様のを害する存在と捉えている。


この国でもっとも高貴な方のは国民にとって憧れの存在であるから、そのを害する存在、ましてやツガイも居ない異物は嫌悪の対象とされてしまう。


実際サリーだけでなくこの街に住む多くの人間が彼女に対してあまりいい感情を持っていない。


ただ、それでもこの街に居られるのは現在の町会長が、彼女の祖父であり前領主様の親友であるからという理由からだ。


しかし、町会長が居なくなれば……。


そう考えた時、心のどこかでモヤモヤするような気持ちが沸き上がる気がしたが、目の前で楽しそうに笑うツガイに告げることはできない。


「そうか、だから仕方ないか」


「そうよ、のくせに、慈悲深い王太子夫妻にすら嫌われているんだから自業自得よ。ああ、今回の嵐であの忌々しい店ごと消えてくれないかしら……」


「それは流石に言いすぎじゃないか!?」


行き過ぎた言葉を言ったサリーを反射的に諫める。流石に無視をするのは彼女が異質だから仕方ないけれど消えてほしいとまで願うべきではない。


しかし、僕の言葉にサリーの瞳にみるみる涙が浮かぶのが分かった。そこで自分の間違えに気付いた。


サリー、僕のツガイ。彼女が望むことはそれが例え間違えだとしても認めてあげないといけない。それが彼女の唯一のツガイである僕のつとめだ。どうしてそれを忘れてしまって彼女に大きな声を出してしまったんだろう。


「ごめん、サリー。びっくりしたね」


僕はサリーを抱きしめた。するとサリーは僕の腕の中で涙を流しながら唇を尖らせる。その仕草の可愛さといとおしい香りに頭の芯の方がぼんやりとするのが分かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る