第4話 ペルロイド

第4話 ペルロイド


えぇ!?と声をあげる俺たち、さくら姫は「父です…」というと、屋根からクルクルと回りながら1匹の大型犬が降ってきた。


「あ!たくとくん!やっぱり知ってる奴だったにゃ!!」

ふふん、と鼻息をたて、そして足首に気にしながら大型犬は、

「よくぞ、俺の開発した『自律式AIホログラム・いぬかいくん』を見破ったな!そう、俺こそが!犬界の稀代の発明家にして、マフィア『シズク』のドン!俺の名は『ミスターバーナード』であーる!!んんがぁっはっはっはっはっ!あー痛……」

どうやら足首を捻ったらしい。よく捻るくらいでおさまったな。


「おい、クロ…なんだこのセントバーナードは」

「こいつはね、犬の世界も猫の世界もめちゃくちゃにしようとした大悪党!マッドサイエンティスト、ポコちゃんにゃ!!」

クロは鼻息荒く、そして今までよりも力強く、解説した。

「ご紹介どうも…って俺の本名を軽々しく言うなぁ!!」

あ、もうダメ、と思った瞬間には人間笑っているものだ。

「ぶー!!!!ポコちゃん!!!ぬひひひひ!!この見た目でポコちゃんて!!」

まぁわかってたと思うが、俺は吹き出してしまった

そしてこれが引き金だった


「あ、たくとさん!ダメです、それ以上は!」

言い終わると同時に頬を何かが掠めた……ミスターバーナードの手には

「これ以上俺を侮辱することは…許さぁぁぁん!!」


「拳銃!?犬が使うな!そんなもん!!」

「せからしかぁ!!!!」と銃をパンパン打ってきた。

「あいだ!!あいだ!!……ってこれBB弾じゃねぇか!」俺は数個拾い上げ、思いっきり投げつけた。

「いでぇ!!ぐぬぬ…それまで見破るとはぁ…」

「いや、よく考えたら、犬っころが本物買えるわけねぇから」

バーナードは、顎が外れんばかりに驚愕していた。

「クロ、こいつバカだぞ…ん?飼い主がホログラム…?お前、飼い主はどうした!」

「くくく…御館様はなぁ…」

バーナードは怪しい笑みを浮かべた。皆固唾を飲んで言葉を待った。

「お前…まさか…」


「海外旅行中じゃああああ!!!!」


「帰ろう」皆ゾロゾロと出口に向かった。

「だー!待てぇい!生かして帰すとでも思ったか!このスットコドッコイ!俺の名を聞いたり笑ったりした奴は等しくぶっ殺す!!!出てこい!!キラーマシーン!!!」

バーナードはスイッチをポチッと押すと、某宇宙戦艦な音楽が聞こえた。

館全体が揺れたと思うと、屋根が開き、巨大なロボットが現れた

「なんっだありゃ!!」

「あれは我の亡き兄貴、ペルを模したロボット!名付けて!!ペルロイド3号!!」


「─マ"ッ!」


巨大ロボット・ペルロイド3号が現れた!

さぁ、一体どうなってしまうのか!!

次回に……

「なんて言ってる場合じゃないよ!たくとくん!!」

「現実逃避くらいさせろ……流石に……死んだよなぁ、これ…」

動き出して、今に俺たちを踏み潰さんとするロボに死を覚悟した俺はじっと見つめるしかなかった。


すると突然「ドンッ!」という音と共に、ロボットはゆらりとよろめいて倒れた。


「なぁんだとぅあ!にぃ!何奴だぁ!!」

バーナードが空を見上げると、轟音とともに目の前に一匹の猫がクルクルと回りながら降り立った。

「でぇじょうぶきゃ、クロスケ!」

突然現れた赤茶けたサビ猫が、物凄くいい顔でドヤっている。

「知り合いか?」呆けていた俺がクロに聞いた。

クロはくんくんとサビ猫の匂いを嗅いで、嗅いで、嗅いで…

「おみゃあ、わからんだぎゃ!!」とクロは頭をポフンと叩かれた。

「こ、この肉球の感触…はっ!サビゴロー!」

クロはもう一発叩かれた。

「サビじゃにゃあ!何遍茶色じゃ言うたらええ!チャゴローじゃ!テキトーがすぎるわい!」

鼻息荒く登場したのは、クロの猫又仲間であるチャゴローだった。


「クロスケ!なぁにをモタモタしとるがね!」

と、クロを立たせた。そして俺や大家さん、ピヨ吉を見て、

「クロスケ…悪いこたぁ言わん、貧乏は敵ぞ!」

俺と大家さんはカチーンと来たが、初手は

「テメェ舐め腐ったこと言ってんじゃねぇそゴラぁ!」ピヨ吉だった。

「はっ!手羽先如きに、なーんができるんじゃあ?おお?…ふぎゅ!」

まぁまぁ好戦的な態度だったが、大家さんのホウキでバチコーンやられてしまった。

「あんたねぇ、こんなところで煽ってないで!後ろ見な!」

大家さんのホウキの先を見ると、先程倒れたロボが今にも立ち上がりそうだった。


「くぉのぉ……野良猫共がぁぁ…許さん!」

と、バーナードが往年のロボットアニメのようなコントローラーをガチャガチャ動かし始めた。

「……PGK↑K←→タメP三連同時押し!やぁっておしまぃい!!」

何かのコンボだな!と心の中でツッコンでいたが、ロボの目が怪しく光出した。

「ンマ”ーー」と口が開き、バチバチと火花が散ったかと思ったら………


「最大臨界点到達、自爆シマス」


やーだー、爆発オチとかサイテー


爆風を巻き上げながら、ロボは勝手に爆発四散した。爆発後の俺たちの、思いは1つだ。


「なんだったんだ、これ…」


全壊した犬飼邸とロボの瓦礫の下からバーナードがのそりのそりと這い出してきた。

「コンボ…入れ間違えた……ぁガクリ…」

「お父様ぁぁ!」気絶する父、泣く娘……

恐らく俺たち全員、死んだ魚のような目になっていたことだろう。

皆アフロに煤まみれ、まるでコントではないか。

「あー…クロスケ?わしゃあこっちじゃから、またな…」チャゴローはバツが悪そうに帰った。

「……俺達も…帰ろう」

俺たちも全壊した犬飼邸を後にし、アパートの修繕費を計算するのであった。


「猫又共ぉ…次は見てろぉ」

バーナードとさくら姫は悲しい顔で犬飼邸だったものを眺めていた。


「そういや大家さん」俺はふと思った。

「なんだい」

「クロってウチに置いておいていいの?」

まぁ大家の許可がないと…の前に大家さんもピヨ吉いるしなぁ。

「まぁしょうがないさね」

「やったぁ!たくとくん、またよろしくにゃ!」

「しゃーねぇからおいてやるよ、っとに、今度は勝手に居なくなんなよ」

「うん!」

許可がおりて、クロは我が家の住人となった。


猫又になった元俺の飼い猫・クロ

そして、元飼い主の俺、高梨匠人

人生史上、最大にめんどくさい生活に巻き込まれていくのであった。


第1章 完

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ニャンぐすたっっ! 櫻木 柳水 @jute-nkjm

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