第12話

「何だと!?」


 2年が過ぎた。ある朝普通に食事をしていたら代官が焦った様子で父親に話しかけていた。今までにない出来事だ。何があったんだろう?


寄生木ヤドリギが出たのか!?」


 寄生木? そう疑問に思っていると母親が説明してくれた。


「レイフォン、寄生木はね、他の木に寄生して成長するの。それもただ寄生するのではなくトレントのように寄生した木を操ってくるの」


 トレントは中級の魔物だ。普通の木に擬態してて近づいてきた得物を根を使って絡めとったり、枝で殴ってくる。


「それが問題なのですか?」

「まあこれも問題だけど、寄生された木はぼろぼろになって使い物にならなくなるの。そうなると財政が厳しくなるから大変なのよ」

「なるほど」


 ツリー家は木材関係の収入が多い。それが無くなると大変だろう。


「それでどうするのですか?」

「植物魔法の『植物同調』があるでしょ。あれを使えば寄生木の居場所がわかるから使うのだけど……。たぶんお父さんとレイフォンがいくことになるわ」

「私ですか?」

「ええ。私はロンと一緒にお留守番ね。わかった、ロン?」

「わかりましたお母様」


 ロンは私の弟だ。のんびり屋というべきかこんな時もゆっくり食事をしている」


「レイフォン、私と一緒に寄生木の討伐に行くぞ」

「わかりました」


 こうして慌ただしく朝食が過ぎていった。




「どうなっている」

「あ、領主様!?」


 森の近くにある陣地にやってきた。どうやらかなりの大事になっているようだ。今も慌ただしく人が出入りしている。


「どうやらかなりの数が寄生されているようです」

「うむ。それで集まった人数は?」

「はい、それは……」


 そばで話を聞いているとかなりの数が集まったようだ。ただ植物魔法の使い手は少なく、20人くらいらしい。

 その後もいろいろと話していき着々と準備が進んでいく。


「レイフォン、お前は左からの行け。私は右から行く」


 おや? てっきりついていくものだとばかり思っていたが違うのか。


「ついて行かなくていいのですか?」

「ああ。そろそろレイフォンも一人でも大丈夫だろう。だがもしもの時は逃げなさい」

「わかりました」


こうして初めての魔物との戦闘になった。





「あれです」

「ああ! おりゃぁ!」


 といってもやることは『植物同調』で寄生木を特定して、それを伝えるだけなのだが。そんな訳で寄生木の特徴を把握するのは簡単だった。冒険者の人にも聞けたし。

 まずランクは低級から上級までの間だ。というのも寄生した対象によって強さがバラバラなのだ。普通の木なら低級、低級の魔物なら中級、といった感じに1ランク上がると想定すればいい。

 次にそこから分裂して増えるのだが、もちろん分裂元が強ければ分裂後も強くなる。

 寄生木は植物に含まれる。といっても役に立たないのだが。何かに使えないかと思って1体捕獲していじくりまわしているのだが、対象に寄生して魔力を吸う以外に特徴が無い。単体だと脆いし弱い。そんな百害あって一利なしな魔物だ。


 ちなみに捕獲した方法は『植物支配プラント・コントロール』だ。この魔法は植物系の魔物を支配して自在に弄れる魔法だ。今回の寄生木だと寄生させても魔力を吸わせないとか動けないようにした。

 欠点としてこの魔法を使い続けないといけないところだ。あと単純にこの魔法を使うくらいなら倒して素材にしたほうがいい。もっぱら研究用の魔法だ。


 こうして寄生木事件は速やかに終わった。

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