第8話

「でも、何かないかなぁ」


 結局あれからも何かないかと、魔法について書かれた本を読んでいる。

 茨で対象を縛る『ソーン・バインド』、その無殺傷版のつるで縛る『アイヴィー・バインド』、毒を出す『ポイズン・フラワー』、植木を踊らせる『プラント・ダンス』、木々をさざめかせて怖がらせる『フォレスト・フィアー』、飲み物を苦くする『ビター・ドリンク』……


「ろくな魔法が無い。何だよ『プラント・ダンス』とか『ビター・ドリンク』って。いったいいつ使うんだよ。しかも何気に難しいし」


 すぐできそうな『プラント・ダンス』を使ってみたが、操作がおぼつかなくてダンスにならなかった。なんでこんな難しいんだよ。

 結局それからも魔法を見てはツッコんでを繰り返した。


 それから3日過ぎたころだ。父親の執務室に呼ばれたのは。


「およびですか、お父様」

「1か月後、分家のリーフ家が挨拶に来ると連絡があった」


 確かリーフ家は分家の中でも一番くらいが高かったはず。


「挨拶ですか?」

「ああ、正確に言えば婚約者の顔見せだがな」

「婚約者ですか?」

「ああレイフォン、お前の婚約者だ」


 いたんだ。そんな話上がらないからまだ決めかねてると思ってた。


「とりあえずわかりました」

「まあ実感がわかないと思うがこれも貴族の務めだ。失礼のないようにな」

「はい。それでは失礼します」

「まあ待ちなさい。一つ聞きたいことがあってな」


 魔法について勉強したいので早速出ていこうとするが呼び止められた。なんだ、何かやらかしたか?


「えっと何でしょうか」

「魔法の練習に熱心だからな。何を目標にしてるのかと思ってな」


 それか。何か知らないうちにやらかしてるわけじゃなくてよかった。まあかといって不老目指してますなんて言えないしな。


「強くなりたいんです」

「強くか?」

「はい、ご先祖様たちのような強い魔法使いになりたいです」


 まあこれもほんとだ。不老を目指してるのがばれたら殺されるかもしれないからな。そのためにも強さが必要だ。


「ううむ、そうか……」

「えっと、もーいいですか?」

「少し待ちなさい」


 そういって立ち上がると本棚から1冊取り出して渡してきた。


「ポーションのレシピ?」

「ああ、そこのレシピに強くなる方法がある」


 ポーションは飲んだりかけたりするだけで傷がふさがったりする魔法の効果が発動するアイテムだ。そういえばゲームでも飲んだだけで力とかが強くなったりしてたっけ。考えになかった。


「材料は裏庭の花壇の花だ。他にも水は井戸があるから、器だけは使用人に言って借りなさい」

「わかりました、お父様!」


 そうして急いで執務室から出ていった。


「……まったく誰に似たんだか」

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