第6話 憑依
憑依された経験のある方はいらっしゃいますか?
私は無い。
が、目の前で憑依されたらしき人を見たことがある。
最近は地上波での心霊番組がめっきり減った。
今から約30年前、夏になるとお昼のワイドショーでもゴールデンタイムの特番でも心霊番組がよく放送されていた頃の話。
その夜は家族4人でテレビの前で夏の風物詩心霊番組を見ていた。
私は興味があり何とも無かったが、弟は怖がって耳を塞いだり目を伏せたりしながら見ていた。
父が静かにじっと見ているその横で母が「こんなの作りもんよ〜」と言っていた。
確か、トンネルの中で撮った写真に顔が…とか言っていた時だった。
急に目の前のテーブルがガタガタ動きだしビックリしてテレビからテーブルへ視線を移す。
すると目の前で頭を上下する父が目に入った。
「お父さん!?お父さん!?」
母が叫ぶ。
初めは具合が悪くなったのかと思ったが、頭を上下しお辞儀を繰り返す様な格好の父は胸の前で手を合わせ呼吸は荒く、震えながら涙を流していた。
初めて見る異様な光景にパニックになった弟はテーブルの下に潜り込み耳を塞いでガタガタ震え、私はどうして良いか分からず少し離れて父を見ていた。
「出てけーーーーー!!!」
バーン!!!
「出てけーーーーー!!!」
バーン!!!
「出てけーーーーー!!!」
バーン!!!
母が叫びながら父の背中をぶっ叩いた。
この時は母までおかしくなったのかと思ったが、数回叩かれた父は頭を上下するのを止め、ふぅーっと大きなため息を吐くといつもの父に戻った。
あまりの恐怖に号泣する私と弟。
状況が理解できていない父。
サッとリモコンを手に取り、他局へチャンネルを変える母。
「こんなの見るからよー!アンタたちはもう寝なさい!!」
さすがの母も恐怖からか語気が強くなっている。
こんな状況で寝れるはずがない。
自室で寝ることもできず、両親としばらく一緒に寝た。
この恐怖の夜の記憶の無い父は、今でも懲りずに心霊番組を見続けている。
母が父の背中を叩いたことで、父に憑いたものが抜けたのかは分からないが、もし目の前で父の様になった人を見たら試しに背中を叩いてみようと思う。
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