第7話

お互い我慢ができなくなった。

その後僕の自宅に帰って上がらせると、すぐに寝室へ向かいベッドに彼女を押し倒した。

コートを脱ぎ捨てて上半身の衣服を着たままスカートを下ろして僕も自分のパンツを脱ぎ、彼女の足のつま先をしゃぶるように舐めていった。


彼女は唇を噛みながら僕を見つめていた。すると片足を僕の頬に踏みつけるように触れてきたので痛いと言うとうすら笑みを浮かべていた。両脚の間を挟み込んで身体を入れると、目の前に彼女の身につけているラベンダー色のランジェリーが目に焼き付いて興奮した。


下腹部をを舐めてそのまま下着を下ろしふわりと生える陰毛を顔で摩り、そのまま膣の周りを音を立てて愛撫していった。

彼女は僕の名前を呼びながらすすり泣いていたが、躊躇わずに舌を膣の中に吸うように入れた。身体を反っては何度も喘ぎ声を出す彼女の声に気を昂らせて、顔に近づき透明な体液がついた僕の唇をそのまま彼女の唇に口移しすると、彼女もニヤリと目を細めて見てきた。


「入れるよ」

「うん」


僕は硬直した陰茎を彼女の膣に入れていき、痛そうにうずく様子を伺いながら奥まで入れていく。彼女の両方の乳房を鷲掴みして揉みながら腰を上下に振っていった。


「想……ちゃん。あたしを感じる?」

「感じるよ。」

「左……」

「左?」

「そこから左に突いて……そう、早く……イキたい……」

「俺、先にイクかも……何も……喋らないで」


僕はこの時ずるい話、以前に付き合っていた女性とのセックスを思い出していた。


その人は彼女と違って真逆の温厚な性格だった。そう、まるで絵に描いたような美女に近い、男なら誰でも自分のモノにしたいというくらいの人だった。

営みをし始めると、更に品良く小鳥が鳴くように優しく喘ぎ声を出して僕を見つめてくれていた。

その時の醸し出す体温や艶かしさ。何とも言葉にしにくい官能美を思い出しながら、彼女に身を預けるかのように脳内で過去を労っていた。


何もかもが柔らかい世界の中で溺れかけていく……かと思っていたら、彼女の身体が止まっていたので、まだ続けて欲しいかと尋ねたら、いきなり顎を掴まれて平手打ちをお見舞いされた。


僕はまた突然に叩かれた事を反撃して言い返すと、昔の女を思い出していただろうと既に見抜かれていたのだった。荒くなった息を吐いて身体を離すと彼女はすぐに服を着てタクシーを呼んでくれと言ってきたので、僕もパンツを履いてスマートフォンを取り出し電話をかけた。

15分後に彼女はそそくさと何事もなかったかのように颯爽と玄関のドアを開けて帰っていった。


僕らは一体何の間柄なんだろう。


ここまで来ると、ただのやりたいだけの雄と雌同士だ。このような関係が2年続いていき、曖昧な距離感が疎外感として支障をきたしていった。

そしてある日を境にアキに告白されて本命として付き合う事になった。

彼はどちらかというと物怖じをしない方で、相手に深く介入する事もしてこない、いわば淡白系男子だ。男子といっているが、年齢は既に30歳。まぁ付き合うにはちょうど良い相手だ。


その2週間後、アキの家に泊まりに行った時に夕飯に出してくれた寄せ鍋をつつきながら、先日の彼女との出来事を話すと笑いのツボに入ったのか、お腹を抱えて笑っていた。


「ごめんごめん。だってさ、ヤってる最中に元カノの事を思い出してそれを見破られて引っ叩かれるなんて、お笑い芸人の戯言みたいな話にそっくりじゃん」

「……お前、完全に馬鹿にしているな」

「違うよ。まぁそういうのもアリなんじゃないかな。彼女はただ不器用なだけの人かもしれないよ?」

「まぁ、ぶっきらぼうというか……野獣みたいに襲いかかるかと思ったら、そこまで酷い目には遭わせるところはないしな」

「想ちゃんへの愛情表現の一種かもね。皿貸して、継ぎ足すよ」


彼は不思議と器が大きい奴だ。普通ならそんな人間とは別れた方がいいと言ってくるはずなのに、まずまずは様子を伺えと示してもう限界だと察知したらその時に考えろ、だと言ってきた。

一応僕はあなたの恋人なんですよ?と、言っている僕もそんな彼女にいつまでもセフレでいるわけにはいかないし、振り回されている場合ではないのだ。


どこで別れようか、この時から悩まやされていた。

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