第4話

「自信あるよ。早くしよう」

「正直……あまり経験の数が少なくてさ。なんか妙に照れるというか……」

「だったらあたしが先にしてあげる。下、脱いで」


言われるがままにベルトを外しパンツを下ろし彼女は無表情で下着の中を弄り始めた。何か考えているのか、どうしたのかと尋ねてみた。


「あたし、想ちゃんのカタチ好きかも……」


彼女は陰茎を掴み先から舐めていった。僕は視界が少しだけおぼろげになったが、目を擦り彼女の動作を眺めていた。案外手慣れているようだ。その雰囲気に陶酔するかのように気持ち良くなってきて、彼女の頭や肩に手で掴んでは壁を見つめていた。


一層のことイッてしまいたい。


僕の表情を見つめながら唇の周りを舐めてニヤリと獲物を狙うかのように微笑んだ。


「キス……させて……」


僕の上位に身体を乗せて覆うようにお互いに唇を重ねた。彼女のブラジャーのフックを外してブラウスを脱がし、床に倒れ込んでは繰り返しキスをした。


「ベッド、行こう」


部屋の灯りを点けずに互いに裸になり窓際に立たせて脚を開かせた。彼女の陰部の中を愛撫しながら背中を舐めていくと、早く入れてくれと言ってきたのでベッドに四つん這いにさせて、溢れるくらいに濡れた膣の中に挿入して、腰を振り出した。


「そっちも慣れてるじゃん……」

「したい事あったら……言って……くれ」


窓のサッシが結露で滲んでいる。お互いの体温が上がってきて吐息が湿度を上げていき、次第に窓も白くなっていった。


「もっと強く……いいよ、もっと振ってきて」


僕の頭の中は破滅しそうなくらい彼女の長い髪に顔を絡みながら体力を出し尽くした。


「はぁ、はぁ……いいよ。いい、想ちゃん」

「うまく、入っているか……?」

「うん……」


お互いに吐息が交じり合い昂って何度も突き合った。


「ヤバい……いやぁ……想ちゃん……!」


僕は汗滲む背筋が緊張感から緩み出して身体の動きをゆっくりと止めた。陰茎を出してティッシュで中が出ないように押さえつけた。


そうだ、コンドームをつけ忘れていた。


先の事を考えてしまっていたが、彼女の身体に寄りかかり横になった。


「初めてじゃないみたいだった。やるじゃん」


あまり褒め言葉には聞こえなかったが、トクンと胸の奥が優しく触れられた感じになっていた。目眩にも似たような感覚だった。まだ酒の酔いが抜けきれていない。

余韻に浸りたいと思っていると、彼女はすぐさま下着を身につけて毛布を被りあぐらをかいて座り、部屋着を貸してくれと言ってきた。


いたずらにも積み上がったブロックがものの見事に雪崩れ落ちたかのようにエロティックなムードはぶち壊された。

聞こえない程度にため息を溢して、クローゼットから服を引っ張り出し彼女に渡した。僕も自分用のスウェットを着てベッドに仰向けになり目をつぶった。


「タクシー呼ぼうかな」

「帰るの?」

「帰ってほしくない?」

「お好きにどうぞ。」

「じゃあ……想ちゃんの横にいる」


僕の眠る横に押しつぶすかのように身体にまたがってくっついてきた。泊まりたいならそう素直に言ってくれと言わんばかりに感情が浮き彫りになりかけたが、あくまでも女性だし、少しは優しくしてあげたい。

僕もこの時ばかりは彼女にそう接してあげたのだった。


気がつくと朝の6時になっていた。

目を覚ますと足元に彼女の頭が乗っていて身動きが取れなくなっていた。声をかけるとようやく目を覚ましてくれた。


「ご飯」

「えっ?」

「朝ご飯作って」

「……わかりました」


なすがままだった。飯を作れと言った時のダミ声を聞いた時背筋が凍った。

冷蔵庫を開けると食材が残っていたので、これでもしなければシメられて買い出しに行かされるところだったかもしれない。

渋々になりながらも支度ができると再び声をかけて席に座るように促した。


「いただきます」

「どう?」

「トーストに味噌汁か。……しめじとなめこかぁ。うん、温まる」

「バターとジャム、どっち使う?」

「バターがいい……んふ。この組み合わせ悪くないね。美味しい」


昨夜あれだけ浴びるように飲んでいたとは思えれないほど、大人しく素直に食事を頬張っていた。眠気覚ましのコーヒーを渡すと、ほとんど無言で啜っていった。


「あぁ……ごちそうさまでした」

「全部食べてくれてこっちもありがたいよ……ふふっ」

「何?」

「メイク……乱れてるし。顔洗ってきなよ」

「洗面台とトイレ借りる。いい?」

「あぁ」


なんだか愛らしく見えた。こういうところは幼い子どもと似たような感覚に思えて、こちらも見守る親の気分になっていた。

しばらくするとリビングに戻ってきて、衣服に着替えていた。


「気をつけて帰ってくださいね」

「急に泊まってごめん。とりあえず……ありがとう」


そう言って彼女は玄関を開けて出ていき自宅に帰っていった。

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