第28話 書店の開店前が一番ピークだと思う

 小鳥あるみの毎朝のルーティンです。


 書店の朝は早いです。開店時間の1時間前には出勤をして、新刊の準備をします。新刊が多い時は、それよりも早く出勤することもあります。

10時開店のお店であればそこまで早起きしなくてもいいですが、駅ナカの書店時代は始発で通っていました。開店が8時だったので7時には出勤、年中汗だくで新刊準備をしていました。


 新刊が多い日は、新刊準備に忙殺されます。手分けをして、すべての新刊を棚に出し切るのは一種のタイムレースのようなものです。開店前にフロアに段ボールや結束を残していてはいけない。がむしゃらに動きます。


 新刊が少ない日は、まったりタイムです。それぞれが棚の準備をして、注文品を愛風します。

 そして店頭の大型ディスプレイを使って、歌合戦をしていました。CDを持ち寄って、当時のおすすめ曲をみんなで聞きながらの開店準備!たぎりました。

 また、アニメや映画のプロモーションDVDを流して、キャラクターのモノマネ大会も開かれます。

 『進撃の×人』のDVD付限定版の販促DVDをかけると、どこからともなく歌い出す店員が現われます。流れる巨人の動画とともに、奇行種のモノマネをして店内を走り回る店員、ほうきを立体起動装置にみたてて捕縛に向かう店員、笑い転げる店員と、カオスな状況でした。

身内しかいない店内は格好の遊び場と化していました。あまりやりすぎると、社員さんに怒られるので、ギリギリのラインで楽しんでいました。仕事をしながら、チームワークを形成していたといえましょう!


 開店前にやる作業として、店内を軽く掃除します。クイックル的なものを使って、床をはいていきます。ある日から、業者さんではなく店員でやろうということになりました。費用削減のためですが、今まで掃除が業務内容ではなかったので反発も強かったです。が、仕方ない。掃除も自分たちで行います。

 少しでも楽しくするために、掃除をしながら小銭を探すゲームが誕生しました。レジから遠い棚の下でも、意外に小銭が発掘されます。

掃除担当になった店員は、その日いくら発見したかできゃっきゃします。もちろんお金は拾得金としてお店に没収されます。

ただ掃除をやらされていると思うよりも格段に前向きになれました。仕事は捉え方次第で面白くなることを体感しました。


 開店前には朝礼もあります。連絡事項の締めには、笑顔を作りながら接客用語の復唱をします。店員同士のコミュニケーションのため、日替わりのお題もありました。

好きな俳優、行ってみたい都道府県、子どもの頃の夢、など簡単な質問を通して仲良くなっていこうというものです。

今になると、当時の上層部もコミュニケーション創造に苦しんでいたんだなぁ~と思います。


 書店に限らず、開店前、閉店後の店員のテンションって独特かと!

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