第26話 有名人の来訪

 小鳥あるみの接客体験です。

書店で働いていると、有名人を接客することもあります。平静を装いつつも、ドキドキ心拍は跳ね上がります。


 以前、駅の中にある書店で働いていた頃のこと。

新幹線や大きい路線の乗り合いがある駅なので、お客様の多い書店でした。

 ある日、バタバタと店内に駆け込んでくる2人の男性客が。

 黒い長ランを来ていて、リーゼントにサングラス。ピンと来る方は、この特徴で誰だかお分かりかと思いますw

 2人は電車の時間があるからなのか、急いだ様子で店内を回り、かごいっぱいに本を購入してくれました。

恥ずかしながらあるみがレジを担当したのですが、レジの最中でも(変わった格好している人だな~)くらいにしか思っていませんでした。いろんなお客様がいるのでコスプレなのかなとか思っていました。

 レジの最後に、領収書をくださいと言われ、宛名を聞いた時に(あれ、この人コスプレじゃなくて本人じゃね?!)と気付きました。

 買い物を終えると、2人はダッシュで構内をかけて行きました。嵐のようなスピード感で、有名人へのテンパりも時間差で訪れました。

 その日のいいともに、彼らはゲストで登場していたことを知ります。恐らく、新宿アルタで生放送を終えての移動途中だったのではないかなと思います。


 別の店舗では土地柄もあって、芸人さんや声優さんがよく来店していました。

声優さんは勉強のためにコミックを買っていかれる方も多いです。声優さんの顔をよく覚えている方ではないですが、領収書の宛名と、宛名を教えてくれる時の声で見抜いたこともあります。

内心では叫びたいほどファンでも、普通の対応をしていました。が、バックヤードでは「○番レジに××さん来てる!」とか、話題になっていました。


 テレビで芸人さんが好きなコミックを語ることは多いですが、本当に紹介している作品の最新巻を買っていくのを見ると好感度が爆あがります。ビジネスじゃなくて、本当に好きなんだなぁ~と。


 有名な番組で、ジョジ×芸人を名乗っていた芸人さんが来店した時のことです。ジョジ×を欲しいというお問い合わせを受けました。

 え、ちょっと、ついこの前テレビであんなにジョジ×愛を語っていたのに、コミック持っていなかったってこと??いや、でも。とあるみは少し、困惑が顔に出てしまったんだと思います。

 すると芸人さんが、

「漫画自体は実家に全部揃っているんですけど、こっちの家にも揃えたくって」

と、購入の理由を教えてくれました。

お客様に気を遣わせてしまいプロの書店員失格ですが、スカッと納得出来ました。

そうよね、持ってないわけないし、愛する本は何冊もっていたっていいし、布教用だって必要だもんね!


 有名人の来店は、やっぱり緊張してしまいます。

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