第23話 転売ヤーたちとの戦い

  小鳥あるみの店頭対応で体験です。


 〝転売ヤー〟との戦いは、平成時代の書店でも繰り広げられていました。

本は単価も低めなので、基本的には転売の対象になりにくいです。が、付録内容や社会現象化した作品の場合だと、転売ヤーとの戦いの幕が上がることもあります。


『Vジ×ンプ』の場合。

 朝一で、『Vジ×ンプ』を取り置きしたいという電話からスタートします。当日限りであれば、上限もなく取り置きすることが可能でした。

が、段々とこれは転売目的なのではないかと書店員たちは勘付きます。

 実際、きちんと購入してくれます。ですが1人でストアの全在庫を購入していくことはいいことなのか…

付録だけを抜いて本誌はそのまま置いていくということもありました。そして日本人ではないこともしばしば。国籍でどうこうではないですが、明らかに誰かの指示で買い占めている様子を見るのは複雑な気持ちになります。

 夕方になって、純粋な読者と思われるお客様に品切れを伝える時の申し訳なさは何とも言えません。


 このような事例が多発したので、『Vジ×ンプ』は1人1冊という上限をもたせるルールを作り、転売ヤーをだいぶ減らすことが出来ました。



『妖怪ウォ×チ』の場合。

 あの時、日本全土は『妖怪ウォ×チ』旋風が吹き荒れました。

ゲームも売れて、関連書籍もおもちゃも飛ぶように売れていました。

あるみも、書店員仲間とともにゲームを購入してプレイしました。そして大ハマり!

アニメも毎週見て、映画にも行くレベルになりました。

それくらい、魅力にどっぷりと浸りました。

 そして、『妖怪ウォ×チ』のメダルの重要性を肌で知ることが出来ました。


 コロ×ロの付録についている『妖怪ウォ×チ』のメダルを求めて、全国の子どもたちが躍起になったあの日々!あるみも欲しかった…あのメダル…でも、書店員特権を発動させてはいけない!本当に余った時だけ買おうと心に誓いました。

 そんな貴重なメダルを、転売ヤーが見逃すはずありません。

ですが、事前に転売ヤー注意報は店舗、取次間でも流れていたので発売前に徹底的に対策が練られました。

 

 1人1冊はもちろん、電話番号も控えて、引き取り期間は発売から3日間。その期間を過ぎた場合はすぐに店頭に出すことを了承してもらう。店頭に来店出来ない場合は配送で購入してもらうというルールになりました。

 とにかくあやふやな在庫は残さない、この注意を守ることが出来ない場合は購入出来ないということを約束してもらいました。

 書店からの気迫もあって、転売ヤーの買い占めをかなり減らせたと思います。


 本当に欲しいと思っている人に、定価で買ってもらいたいだけなのに!そんな商売の仕方は、本当によくないぞ!と思うあるみです。

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