第20話 サイン会こもごも

 小鳥あるみが実施したサイン会での思い出。


 書店は本とお客様を繫ぐ場所、なのでサイン会は重要なイベントです。

そんなに頻繁に実施は出来ないですが、開催するときには色々と神経をすり減らします。

今ではオンラインでの実施もありますが、当時はリアルイベント一択です。


 サイン会で困ること。

人が集まらない。

タレントさんや著名人にありがちでした。

まさかの、整理券がはけないという…


事前に整理券が残っていても、サイン会当日にいっきにはけることもあります。

ただ当日まで整理券が大量に残っていると、秘密裏に書店員に指令が出されることもあります。

「サクラとして、サイン会に行ってくれない?」

盛り上げるため、出動要請がありましたが、時間になったらお客様がたくさん来てくれた為、サクラは不要となりました。


 サイン会で困ること。

整理券を偽造される。

まさかの偽物が出回るという悲劇です。

それほどに先生の人気があったと言えますが、偽造整理券での入場を許すことはできません。

偽造できないように、パッと見ではばれないように正規の整理券には印をつけたり、印刷にもお金をかけることになりました。

悪知恵は封印していただきたい!


 サイン会で困ること。

時間が押してしまう。

ファンとの交流を大事にされる先生は、1人1人とじっくり向き合います。

そのため、予定していた時間を大きくオーバーしてしまうことも。


サイン会を実施するにあたり、時間配分については出版社の担当さんとも相談します。

サインにイラストを入れる先生、

サインのみの先生、

ファンと話すことが好きな先生、

恥ずかしがり屋の先生、

先生のタイプによって、1人あたりの時間を算出します。


早く進む分には、問題ありません。

浮いた時間を休憩に使えます。

が、時間が押した時はそわそわします。

お客様は時間ごとに並んでもらうようにしていたので、前が押すとどんどん列が伸びていってしまいます。

ただ、サインをしている途中で先生を急かせるなんてできるわけもなく…

お客様達は静かに待ち続けてくれたのが幸いです。


 サイン会で困ること。

先生を前にして書店員も緊張しまくる。


あるみも数人の先生をアテンドしましたが、超緊張しました。

ぺーぺーなのに、なぜかお茶出しを任命されたりw

先生もサイン会前に緊張されているので、アイスブレイク担当も担っていました。

開始前に場を温めるのも、書店員の仕事です。


 サイン会でうれしいこと。

お客様の笑顔。


大好きな先生を前にして、本を持つ手が震えているお客様を見るとたくさんの苦労が報われます。

人生で、嬉しくて震えることってあまり無い体験です。

そんな人達を見ているだけで、こちらもほくほくしました。


 書店員していてよかったなぁ。

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