第16話 書店員の好みに大きく左右される新刊台

 小鳥あるみの新刊陳列の思い出です。


 新刊発売日、それは時間との戦いです。

開店時間前に、完璧な状態にしてお客様を迎えます。

とくに大きいレーベルの発売日や月末は、新刊の量がとんでもないので地獄絵図と化します。


店頭の新刊棚の中でも、一番目立つ平台は各担当の陣取り合戦そのものです。

集×社、小×館、講×社の3人の担当者は、互いに気配りしつつも、いかに自分の子どもたち(担当出版社の作品)をいい位置に置くか。

バチバチです。

少し後ろから、KA×OKAWA、秋×書店、白×社の担当も狙っています。

センター争奪戦は書店店頭でも起こっています。


 あるみは講×社担当なので、週×ガとモー×ングの新刊発売日は鬼になりがちです。

基本は売上順、発売から何日経過したか、在庫数でおおよその位置は決定します。

問題は、ほぼ同じレベルの作品が並んだ時によりいい位置をおさえられるか!

担当者としては、なるだけ前に、なるだけ中央にたっくさん置きたい!


土日は大きい新刊はあまり出ません。

かわりに前倒しで金曜に発売されることが多いです。


 年に数回ある、マ×ジン、サン×ー、ヤン×ャンの新刊がかぶった時は荒ぶります。

あるみの大好きな作品『金田×少年の事件簿』と『名探偵コ×ン』が同月に出た時、ワガママが炸裂しました。


レーベルはなるだけ近くにまとめるようにして、

入荷数で陳列する面積を決めて、

本の大きさもなるだけあわせて、全体のバランスを見ます。


 先ほどもいったように、各自が自分の推し作品をいいところに置きたいわけで…

結果、金×一とコ×ンが離れた位置に!

なんてこった!!!


「ちょっと待って、このままだと名探偵が離れちゃう!」

「いや、もうしょうがなくないですか」

「開店までは時間あるから、ちょっと直したい」

「在庫的にはこれでいいと思いますけど」

数字だけでは納得できないオタク魂が叫ばせます。


「金×一は不定期連載で、やっと出た新刊なんだよ?!ちゃんと分かりやすいところに置かないと売り逃しちゃうでしょ!

それに、金×一を読んでいる人は、コ×ンを読んでるし、逆もまた然り!

絶対にこの2作品は縦か横か近くで並べたい」

完全に自分が両作品を読んでいるというだけのマーケティングデータですが、押し切ります。

鬼と化したあるみの気迫勝ち、ギリギリで陳列位置が変更になりました。


 開店して、続々と新刊が売れていきます。

金×一とコ×ンを同時に買ってくれたお客様には、2割増しの笑顔で対応しました。


書店員のみんな、あの時はワガママ言ってごめん。

勘だけどあながち間違ってはいなかったと思うんだ…

だって、コ×ンとの相乗効果で、金×一は追加注文をしたんだもの。

前回の新刊実績より売れたんだもの。


 棚の陳列は、担当社のパワーバランスと熱意を現しているかもしれません。

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