第15話 自作のPOPが、コミックの帯に採用された衝撃

 小鳥あるみの帯デビューの話です。


 店頭の装飾POPは、書店員が各自で作成しています。

字が上手い人、絵が上手い人は、とてつもないPOPを作成します。

あるみはどちらの技術も未熟なので、マスキングテープでごまかしつつキャッチコピー勝負を続けていました。


 ある日出会った、面白い作品。

作品のセンスにドはまりして、何度も何度も読み返しました。

担当外の出版社でしたが、担当者であるMさんをそそのかして、三桁の追加注文をしてもらいました。

これは絶対に売れる!いや、売るんや!!!と意気込み、POPの作成に取りかかりました。


字にも絵にも自信がないというのに…

どうする、上手い人に頼むということも出来ますが、この本の面白さは絶対に自分の手で伝えたい。


作品の面白さを円グラフで現して、作中に登場したお気に入りのキャラを見よう見まねで書き写しました。

色えんぴつとポスカで、目を引くように色をのせます。


なんともいえない、渾身のPOPが出来ました。

目線の位置になるように、POPを飾ります。

目にはいった人に、少しでも作品の良さが伝われ~と願かけします。


 数日後、POPを撮影している男性がいました。

当時は店内での撮影禁止だったので、声をかけます。

すると、あるみの推しコミックの出版社の営業さんでした。


「このPOP、とてもいいですね。資料として撮影させてもらっていました。

Mさんがちょうど番線を押しに行っていて、誤解させてすみません」

営業さんや編集さんが、店頭の装飾を撮影していることはよくあります。

ちょうど担当のMさんも戻ってきたので、その場を後にしました。


数日後、Mさんが

「あのPOPさ、帯にしたいって言ってたけど大丈夫?」

「嘘でしょwあのPOPが帯になるなんてw出版社が嫌じゃなければいいよ」

この時はもちろん、アイデアベースで本当に実現するとは微塵も思っていません。


さらに数日後、営業さんが出来上がった帯を持って来店しました。

本当にあのイラストが帯になってる!!!

驚きつつも、爆笑しました。

1書店員のPOPが、帯に採用されることってあるのだと!


 営業さんから、もしかしたら書店に作者さんが来店する可能性もあると聞かされた時は穴に入ろうと決意しました。

帯になるより、このPOPを見られる方が何倍も恥ずかしい!

あ、帯の方が出荷されて全国に行くから恥ずかしいか。

いや不特定多数の方よりも、作者さん本人に見られるほうが恥ずかしい!!


恥ずかしすぎて、その時の帯を手元に残していないのが今になって悔やまれます。

家宝にするべきだったのではないか…

あ、でもやっぱり恥ずかしい///


その作品はその年に、ある賞を受賞しました。

重版がかかるごとに、嬉しかったです。


 自分がPOPに詰めた愛を評価されたようで、胸の中がじんわりぽっぽしました。

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