第17話 特典ペーパーを巡る攻防

 小鳥あるみの特典ペーパー対応の変遷です。


 当時、特典ペーパーがちらほら出始めた頃のことです。

今では当たり前の文化になっていますが、出始めた時は混乱が凄かったです。


 ・特典ペーパーの情報があいまい

出版社や取次からの連絡はなく、作家さんやファンがするっと告知、拡散しているパターンもありました。

配布店舗はどこか、先着なのか限定なのか、内容はなんなのか。

お客様の問い合わせに完璧に答えることが不可能でした。


ファイルを用意して、特典ペーパー情報をまとめることになりました。

しかし、刊行物の多さと特典ペーパーの種類の多さで管理はほぼ出来ていませんでした。


新刊発売後、すぐであればいいのですが何ヶ月か経過した作品のお問い合わせも多く、苦労しました。


 ・特典ペーパーをどこに入れるのか

これも大きな問題です。


当初はバーコード部分に【特典ペーパーあり】と書かれたシールを貼って、レジの際にペーパーを封入するという方法でした。

ペーパーの中には折らないと本に入らないサイズもあり、折り目がついたペーパーを嫌がるお客様もいました。


そして渡し忘れも出ます。

忙しくなってくると、ペーパーにまで気が回りません。

後になって「ペーパーが入っていなかった」とお客様のご連絡があり、ペーパーだけを封書で送付したこともあります。


ちょっとこれは、費用対効果に見合っていないぞ!赤字だ!!


次なる方法は、表紙を開いてすぐのところにペーパーを封入して、シュリンク。

表紙部分に【特典ペーパーあり】というシールをはります。

ペーパーは折らなくていいように、A6サイズで出力することにしました。

そして無制限にペーパーをつけるのもやめて、初回注文分のみとします。

これで、渡し忘れや封入漏れは激減しました。

店頭でペーパー封入のお問い合わせを受けても、シールの添付でペーパーのあるなしが判別できます。


 しかし、事件は起こります。

ペーパーだけを綺麗に抜いていくというけしからん者が現われました!

本を少し曲げてシュリンクの隙間を作って、ペーパーだけを抜くという手口。

これによって、【特典ペーパーあり】シール神話が崩れました。

シュリンクを外して、お客様と確認するという方法も考えましたが、シュリンク自体をとって欲しくないというお客様も多く苦慮しました。


最終的に、表紙にペーパーをくっつけるという方法がとられました。

これであればペーパーがついていることは一目瞭然です。

表紙という、本の顔を隠してしまうことになりますが、

それよりもペーパーあるなし問題を解決できるメリットをとりました。

書店員の苦肉の策です。


悪いことをされちゃうと、当然ですが被害が出ます。

特典ペーパーは購入した人のための特典です。

 ペーパーだけ取っていくには、窃盗ですよ!

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