第8話 略さないタイトル名もしっかり覚えたい
小鳥あるみのお客様対応での体験です。
日本人だけではないですが、ちょっとでも長い単語は略していくという文化に翻弄された接客の思い出です。
第1話でご紹介したようなふんわり情報から作品を探すこともあれば、あってはいるんだけどそうじゃないんよ、という作品探しもあります。
ある日の昼下がり、30代後半くらいの綺麗な奥様からのお問い合わせを受けました。
「あの、ごめんなさい。娘に本を頼まれていて、マンガなんだけどこんなにあると分からなくて」
「いらっしゃいませ。タイトルか作者さんはお分かりでしょうか」
「それがね、なんだかハッキリしてなくて」
はい、書店クイズの始まりです。
「なんか、フツマシっていうらしいの」
「フツマシ?ですか」
あるみの脳内データにHitしません。
「内容とか分かりますか?」
「フツマシが出てくるらしいの」
…だめだ、フツマシというワードしか手がかりがないです。
「お子さんは何歳ですか?」
「小学4年生なの」
ふむ、小4ともなればあらゆるコミックに触れている可能性が高いです。
が、少年少女レーベルが有力だと推理します。
「フツマシが出てくる、フツマシという作品名ですね。少々お待ちくださいませ」
カウンター脇のPCで、フツマシというワードを読み仮名検索します。
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む~ん、どうしたものか。
悩んでいると、集×社担当のDさんが通りすがりに聞いてきました。
「何悩んでるんですか?」
「フツマシっていう作品を探してるんだけど」
「あぁ~フツマシならアレのことだと思いますよ」
Dさんにはフツマシが何の作品がピンと来ている模様です!
おもむろに、シンキングタイムです。
フツマシ、という作品は何のことでしょうか?!
Dさんの担当出版社はもちろんヒントです。
それでは続きに参ります。
Dさんの後を追って、棚に向かいます。
「多分、これのことですよ」
「これって、『青×ク』?」
『青の祓×師(あおのエク×シスト)』
もはや『青×ク』の愛称が浸透していたため、元の漢字の表記に思いいたりませんでした…
うわーこれはちょっと悔しい問題でした。
お客様を棚の前にお連れして、本を渡します。
「あら、これがフツマシなのね~全然わからなかったわ、ありがとう」
「エク×シストと読むんです。難しいですよね~」
そんなにお待たせすることなく、ご案内出来てよかったです。
そしてお客様の娘よ…あなたの脳内に直接語りかけています。
逆に難しい漢字の方でお母さんに託すなんて、なかなかやるな…
Dさんがいてくれたからよかったけど、PCの検索力では見つからなかったぞ!
読み方困難タイトルとの戦いは、永遠の課題です。
略称検索も今だと楽ですが、当時のネットでは出ないことも多く、とにかく書店員の脳内検索にかかっていました。
あらゆる書店クイズを乗り越えるのが、書店員魂です。
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