第4話 いろんなお客様が来店するからこその騒動

 小鳥あるみが見た、お客様の手荷物に関する珍事です。


 勤めていた書店は繁華街のど真ん中、百貨店も近いため、多くのお客様がショッピングを楽しんでいました。

来店されるお客様はたくさんの買い物袋を下げていたり、配送サービスを活用する人も多かったです。

買い物を楽しんでくれるのはいいことなのですが、時にどうした?!と言いたくなる落とし物があります。


 その日は残業をして、夜のシフトメンバーに紛れて作業をしていました。

棚の整理も一段落つき、そろそろ上がろうと思って立ち上がった時、視界の端に何か黒いものが通り過ぎました。

何だろう、疲れだな、きっと…


数秒後、業務で使っているポリ製のゴミ箱を逆さにして小走りする男性バイトが通り過ぎました。

…何してるんだろう。

疑問に思っていると、他の男性バイトもわらわらとカウンターから出てきて店内の奥に向かっていきます。


訝しみながらも、退勤のためバックヤードに入ります。

すると執務室のモニターを見つめているバイトたちがいました。


「なに?何かあったの?」

タイムカードを打刻しながら聞くと、

「なんか、お客さんのペットが逃げ出したんだって」

とのこと。


 ペットが、逃げ出した?

今、書店内を颯爽とペットが逃げ回っているとのことです!

あのゴミ箱は、即席のペット捕獲器だったのです!!

いや、あんなでかいゴミ箱では機動力にかけるから、動物の捕獲なんて無理でしょ。と思いつつも、他に使える道具もありません。

男性バイト達の今のミッションは、お客様のペットを捕獲することのみです。


「ペットって、猫とか?」

「いや、あれ、なんていう名前でしたっけ。こうイタチみたいな」

「もしかしてフェレット?」

「そうですそうです!フェレットらしいです」

「いや、書店にペット同伴するってあんまり無いと思うんだけど…モラルハザードもいよいよじゃな」

「なんか、上の階で買い物していて~そこでペット入れていたカゴが開いちゃったらしいです。それでフェレットが階段を使ってうちまで下りてきたみたいですよ~」


 上の階も通常のテナントで、ペットショップではありません。

いや、結局飼い主の問題に変わりはないでしょう…

カゴの確認ミスもそうだし、生き物を連れてショッピング巡りはよろしくはないでしょうに。


 モニターを見ると、ある棚の前で腹ばいになる男性バイトと、その後ろにゴミ箱を構える男性バイトの姿がありました。

とりあえず、外野に出来ることはないので冷蔵庫に入れておいたスイーツを食べます。


数分後、やりきった顔をしてバイト達が戻ってきました。

「フェレット、無事に捕まえました!」


 今日も平和な書店で何よりです。

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