第3話 どうしようもない人は本当にいるし、鉄槌が下って欲しいと願った日

 小鳥あるみの電話対応で体験した珍事です。


 第2話でも書きましたが、電話応対は神経がすり減ります。

対面よりも会話が難しく、クレームになる確率も高いので慎重な対応が必要になるからです。

そして電話のコール音が心底嫌になった出来事があります。


 お昼を過ぎ、混雑していない時間帯に、カウンターに設置されている電話が鳴りました。

メモとパソコンの用意をして、2コール以内で電話に出ます。


「お電話ありがとうございます。▲▲書店コミック担当の小鳥です」

何万回も唱えた前口上がスムーズに出ます。

右手にはペンを構えて、左耳の受話器に全集中します。

お客様は若めの男性でした。

明るい声を出して要件を伺います。


「書籍をお探しでしょうか」

「…はい。あの…タイトルが…凄く長いんですけど大丈夫でしょうか…」

ポツポツと小さめの声ですが、大人しそうなお客様で一安心します。


「はい、メモもとらせていただくので大丈夫ですよ」

「じゃあ、言いますね。大好きなご主人様の奴隷です」

ゆっくり話してくれるので、メモではなく直接パソコンにタイトルを打ち込んでいきます。

「『大好きなご主人様の奴隷です』」

聞き間違いを防ぐために、復唱をします。


「ご主人様の大きくなった××の××を飲ませていただけますでしょうか」

男性は続けてタイトル名を伝えてきますが、なんかおかしくないか??

まだ続きます。

「私の××になった××に、ご主人様の××を」

いやいや、絶対におかしくないか??!!

タイトルの長さもだけど、卑猥ワード多くない?!


復唱をしながら検索していた手を止めます。

こいつ、ある種の痴漢、じゃないか??


「あの、お客様。一度ここまでのタイトルで検索したのですがHitしませんでした。

お探しの作品はコミックで間違いないでしょうか」

 あるみの書店は18禁作品の取り扱いがありません。

本当に18禁作品を探しているのであれば別のお店をご案内しなければならん!

もしかしたらDVDの可能性もあります。

痴漢を疑いつつも、本当にこのタイトルの本を探している可能性も捨てていません。


「あ、まだタイトルが途中なんです。すみませんが繰り返して言ってもらえますか」

はい、痴漢確定フラグが立ちました。

店員に卑猥な言葉を復唱させることが、この客、いや客でもないですね。痴漢野郎の目的でした。


こんちく!!

純粋に本を探してあげようとしたピュアな感情を返してくれ!!

こんな昼から、何してるんだ、暇なのか!!ぐううううう


すぐに同僚の男性店員に電話を替わってもらいました。

すると速攻で電話は切れました。

はい、真っ黒な犯罪者との本当に無駄な数分間でした。


 こういうことで嫌な気持ちをさせてくる輩には、とんでもない鉄槌が下る世の中であって欲しいと願います。

ビジネス売り場にはこういう電話の被害は極端に少なかったです。

女性店員が多そうな売り場を狙っていると思うと、また腹が立ちます。

そんな無駄知恵はもっとプラスのことに使えよ!!と本棚の中心で叫びました。

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