第2話 電話とジェネレーションギャップ

 小鳥あるみが体験した、バイト男子との思い出です。


 当時のお問い合わせは、アナログです。

現在のようなメールやチャット、電話の自動音声案内もほぼなく、基本は店頭での接客か電話での対応でした。


 本当ーーーに、電話のお問い合わせのストレスといったら!

・2コール以内にとる。

・声色は1オクターブあげる。

・1分くらいで返事を戻せない場合は、折り返しにする。

・長くなりそうな場合も電話代を気にされるお客様がいるので折り返しにする。

これらのルールに加え、通常の接客よりもクレームになりやすいこともあり神経をすり減らします。


 音のみが頼りですが、聞き間違いも頻発します。

店頭であればメモを書きながら、見せながらの確認が出来ますが電話は出来ません。

しかし電話でのお問い合わせを無視することも出来ません。


 簡単なお問い合わせに当たるか、1日かかるようなお問い合わせにあたるか。

まさに電話ガチャと言えます。


 ある日のお昼休憩、先輩社員とまったりしていると申し訳なさそうに男子学生バイト君が来ました。

手にはメモを握っています。


「あの、休憩中にすみません。電話でのお問い合わせで、作品名で検索してもHitしなくて。作品名が違うのかもなんですが。もし分かったら教えて欲しいんですけど」

「なんてタイトルで検索したの?」

先輩社員がランチの手を止めて聞きます。


「えっと、『Tバックハイスクール』って言ってます」

??

「そのタイトルで検索しても出てこなかったんだよね」

「はい…」


 あるみも謎解きに参加します。

「ハイスクール?Tバックの?大人向けのマンガとか、あとはラノベ系なのかな。でもHitしないんだよね」

そうなると、お客様の言い間違いか、バイト君の聞き間違いか。


「出版社だけは分かっているらしくて、講×社って言ってました」

ふむ、講×社担当として『Tバックハイスクール』という作品を目にしたことはない…

何だ、どこが間違っている?

あまり時間もかけられないし。


「Tバックハイスクール…ティーバックハイスクール…てぃーばっくはいすくーる…」

何度かタイトルを繰り返していると、あるみの脳天に雷が落ちました!

「『Tバックハイスクール』じゃないよ、『BE-×OP-HIGHSCHOOL(ビー×ップハイスクール)』だよ!!!」

よく閃いたな、と。本屋の神様の天啓だと思いました。


「『BE-×OP-HIGHSCHOOL』の取り扱いは今はなくて、一応出版社の在庫確認して注文するかお客様に聞いてね~」

「ありがとうございます!」


 バイト君が去った後、気絶しました。

そうだね、バイト君は世代じゃないものね。

知らない作品名をヒアリングするって、とっても大変だものね。

でも伝説のヤンキーマンガが、謎マンガに変換されたのは面白すぎるぞ!


 電話に変わる問い合わせ方法の拡充を願うあるみでした。

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