『パーティ⑤』

 

石田カナは聖女のように優しく清楚で美しい女性だった。だから皆から好かれていたし、愛されていた。



街を歩けば誰もが振り返り、立ち止まって見惚れる程に美しく、そして可愛らしい少女であった。そして今日も例外じゃなく――。



「石田さん、綺麗だね!そして誕生日おめでとう!一曲踊らない?」



そう言いながら早口で捲し立て、手を差し伸べる男たちが沢山いた。……綺麗という言葉は透以外に言われても特に響かない。



光輝には揶揄って言っていただけであって綺麗なんて言葉は愛する人にしか言わないと嬉しくないのだと、そのくらい分かっている。



めんどくさい、と思っていると、



「………すみません、ちょっとカナを借ります」



そう言って手を引かれた。いつもなら絶対にしない透の行動に驚きつつも、少し嬉しい気持ちになった。




会場から離れた廊下の端っこまで連れてこられたかと思うと、急に手を引っ張られ抱きしめられた。一瞬何が起こったのか分からなかったが、すぐに理解して顔が熱くなるのを感じた。



「と、透さっ……」



「ごめん。嫉妬、したんだ……。俺以外の男に触られて欲しくなかったんだよ」



恋人になってから初めて見る彼の独占欲。こんなにも自分を求めてくれることに喜びを感じると同時に――



「(私だって同じなのになぁ)」



心の中で呟きながらも、今自分が出来る精一杯のことをするべく、目の前にある背中に腕を回した。

すると更に強く抱き締め、



「……私も透さん以外の男には触れたくないです」



「ありがとう」



お互いに微笑み合い、キスをした。




あれから数時間が経ち、パーティもそろそろお開き、という時間になっていた。食事も食べ尽くしたし、ダンスやらなんやらもやったためもう満腹であるので解散となった。




△▼△▼



「ねぇ、氷室春人」



「おん?何?松崎カナ」



唐突に声をかけてきたカナを見て首を傾げる春人。今は帰る準備を整え、帰っているところでカナは春人に声を掛け、



「このパーティに行く前にさ、言ってたじゃない。透さんに頼まれて私を喫茶店に連れて行くように頼まれたって」



「え?あー……うん?そうだけど?それがどうかした?」



首を傾げ、不思議そうな顔をしている春人を横目に見て溜め息をつきながら、



「もう!察してよ!どんな話をしていていたの!?」



グイッと近づき問い詰めると春人はうわっと顔を歪ませ、



「分かった。話すから。てゆうか、後ろにいる男が怖いからささっと離れろ。俺は和馬以外に近寄られても嬉しくないので!」



そう言いながら、カナの耳元でこう言った。



「俺はあの男に松崎を遠ざける役割だったんだよ。正直嫌だったし断りたかったけど、圧があったから仕方なく引き受けただけだ!これが話のオチ。ほら、面白くも何ともないだろ?俺はもう帰るからな!」



春人はそう言ってさっさと和馬と春香の元に向かって行った。



その後ろ姿を眺めながら、



「さ、私達も帰りましょう。透さん♪」



そう言ってカナは透に抱きついた。

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