『パーティ④』

「……カナ。誕生日おめでとう。これプレゼント」



父親の言葉と共に渡された。それは綺麗に包装された箱だ。それを受け取ったカナはじっと見つめる。



昔ならこんな父親に何かを貰うなんて有り得なかったし、仮に貰ったとしても受け取らなかった筈なのに。でも、今は違う。



素直に感謝出来るようになった。そしてその感謝の気持ちが――。



「ありがとう。お父様」



本当に心の底からそう思えたのだ。

だから自然と笑顔になれた。

そんな娘の表情を見て父親は少し照れ臭くなったのか顔を背けながら言う。



「………そうか」



と、そう言って、それから父親は扉の方をへと移動しながら、



「俺はもう戻る。後はお前らで好きにやれ」



そう言いながら父親は去って行った。



△▼△▼




――思い通りの人生だった。何不自由なく育ち、欲しいものは何でも手に入った。



京介が何を言わずともみんな察してくれて。お膳立てをしてくれて。何もかも上手くいったし、これからもきっと上手くいくだろうと思っていた。



そしてそれはこれからもそうだと、思い込んでいた。だが、違った。家族だけは思い通りには動いてくれなかった。

娘も妻も決して思い通りにはならなかった。



そして、初めて妻を愛してしまった。今までは人なんて愛して来なかった。だから初めてだった。愛する事がどういう事なのか、やっと理解出来た気がした。

そして同時に自分の愚かさを痛感させられた。



どうして早く分からなかったんだろう?美香子にもっと愛してるってもっと伝えていれば良かった。

もうこんなことを後悔しても遅いのだけど。それでも後悔せずにはいられない。



しかし、今更悔やんでも仕方がない。妻はもう遅いが、娘とは向き合えた。今まで逃げていた分を取り戻すように。たくさん娘と話した。今までのことを謝罪して、そして許してくれた。

まだ時間はある。今度は絶対に間違えない。ちゃんとした親になる為に頑張ろうと決意する。

――そう思っていたけど。



「(まさか透くんとカナが……)」



くっつくと思っていなかった。最初のうちは茜と透とカナの三人で付き合っていた。側から見たら浮気だが、茜とカナは承知の上で付き合っているようだったので特に問題はないと思っていた。



だけど、そんなのでいつまでも上手くいくこともなく。結局別れてしまった。寧ろ、最初の頃は奇跡的にうまく行っていただけなのだと思う。



その後すぐに別の男と茜はくっついたのでその話は無効になったが。そして、透とカナも結婚した。今もラブラブな夫婦だ。



昔の自分に話しても信じられてないかもしれない。娘と向き合って変わったと思っていたけど。やっぱり自分はダメな父親だと再確認させられる。



「(久しぶりに美香子に会いたいなぁ)」

 


久しぶりに、会いたいと強く思った。会って話がしたいと思った。



「(墓……行ってみるかな)」



明日辺りにカナと一緒に行こう……と、そう思った。

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