『さいころパス』 中

 さて、やましんさんには、怪しい相談役がありました。


 宇宙妖怪探偵、ダジャレー氏です。


 かつては、宇宙で暴れまわった悪霊妖怪でしたが、今は、地球で地道に探偵業をしています。


 なぜ、突然、悔い改めたのかは、未だに謎でありました。


 実は、銀河宇宙連盟警察からは逮捕状が出ているのですが、地球は銀河連盟に未加盟なため、逮捕ができないのです。同じビルに入っている、人気探偵のミス・テリーさんが、監視役になっております。彼女にとって、ダジャレー氏は、明らかな敵なのですが、なんだかんだと言いながら、最近はダジャレー氏をかばうことが多くなっているのは、不思議と言えました。ダジャレー氏が地球で真面目に働いているのには、そうした事情があるのだろうと、やましんさんは見ていました。


 ただし、ちょっと不気味で、愛想のかなりよくないダジャレー氏は、社会的には不人気で、あまり仕事がありませんでした。バーチャル相棒の、ノットソンが、小さな事件を起こしたりして、やっと食べていたのですが、たまには、まともな事件が来ることもありました。

 

 たまたま、やましんさんとは、同じ町内会であり、なんとなく、社会から外れてしまった、似た者同士でもあり、たがいに、悪口を言い合いながらも、仲良しだったのです。


 ただし、妖怪とか、幽霊とか、宇宙人とかの存在を認めないやましんさんと、そうしたものが普通な宇宙妖怪の取り合わせは、不可思議以外の何でもありませんが。


 さて、それで、やましんさんは、ダジャレーに電話で、この辺りで起こっている事件の概要を話しました。


 『ふうん。情報をあげてもよいが、返礼はなにかな。』


 『このあたりは、魚の宝庫ですからね、前に一度差し上げた、あの、おいしい、特産高級すまきを複数、買って帰りましょう。いや、明日にでも、早めに、そちらに送りましょう。』


 『なに。すまき、を? ふん。あれは、旨かったな。良かろう。』


 ダジャレー氏は言いました。


 『そいつは、たぶん、宇宙妖怪、さいころパスだな。おそらく、そのあたりの伝説にあやかって、居座っているんだろう。やつは、さいころをふらせて、びっくりした人間の、精気とか生き血が好物だ。しかも、賭け事が好きだ。倒すためには、さいころで、ぼろぼろに勝つことが一番良い。あいつの電子さいころは、あいつの思うように動くが、ぼくが送付する、腕時計型の、‘’さいころほいほい‘’、を使いなさい。すると、あなたの思う数字が必ずでる。やつは、いかさまだ、とか言うだろうが、なんと言われても、朝まで勝ち続けて、無視しなさい。太陽が上れば君の勝ちだ。やつは、地球からは、退散する。暫くは来ない。』


 『暫くっ、て?』


 『ま、10年は、固いな。』



 やましんさんは、翌日すぐに、有名な蒲鉾やさんで、すまきを、5000ドリム買い、速達冷蔵便で、ダジャレー探偵事務所あて送りました。


 すると、すぐダジャレー氏からは、ちょっと不細工な腕時計がやって来たのです。



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