第35話

 ついに祝宴の日になってしまった。

 年に数回の厨二病発症中(誰だ!?ずっとだろって言ったの!!)に作った冒険者服の礼装バージョンに着替える。

 ルカの体格と身長に合わせて私だけ肩パッド盛り盛りでシークレットブーツ仕様だけどそこは見逃してほしい。

 髪型はいつに通りのサイドだけ編み込みで、メイクはルカに合わせてよりキリッとめにした。

「化けるなぁ」

 ベン兄さんに微妙な呟きをもらった。

 銀糸刺繍いっぱいな白銀衣装だよ。

 ジャケットはロングコートっぽい、剣帯には日本刀を指す予定で。

 パンツも白皮で巻きスカートちっくなのも片側だけ。

 ベルトを太ももに巻いてる。武装時は投擲ナイフを仕込めるよ。

 礼装には要らない仕様だった。

 サッシュベルトも白銀だ。

 ルカに似合うものはイコール私にも似合うからルカ基準で作った。


「白系の素材取れた時はたくさん避けといたんだよね」

 サーペントやホワイトウルフとかね。

 あまり仕送りとか一気に出来ないからがむしゃらに換金してなかった。

 家族に言っちゃったので今後は何も気にしないでやっていくよ。


「そうしてると男の子の双子みたいだな」

 ふっふっふ!

 もう身長差が出てきちゃったし、骨格も違ってくるから今が一番ピークだと思う。

「ルカ、今度は女装しない?」

「しない」

 即答されちゃった。


「そろそろ出ないと」


 冒険者としての参加なので、祝宴に招待されているお祖父様とは別行動。

 ギルドに呼び出しを受けているので、マント(表)を羽織って、とりあえずギルドに向かった。


「リンク、リュカ。ランクアップしたのに全然来なかったのね!」

 受付からモニカちゃんが声を掛けてきた。

「ちょっと忙しくて」

「もー」

 

 すでに依頼ボードは閑散となって、祝宴に出るっぽい冒険者がまばらにうろついてる程度。


 ギルド長に呼ばれているからと二階に上がっていけば、すでに〈白夜の梟〉と〈爆炎の翼〉が揃っていた。


「よぉ」

「あれ、早くない?」

「俺たちは家のこととか無いからな」

 ん?誰も家庭持ちいないの?

 ジャックたちがそう言うとアウルたちも頷く。

「家庭持つと危ない現場に行きたくなくなるからな」

 はぁ。そう考える場合もあるか。

 必ず帰るための婚姻もあるけど待つ側の覚悟もいるもんね。

 みんな「うんうん」ってやってたけど、

「混ざんなよ、お前バツ三だろう」

 あ、台無しだ。まぁシグとか〈白夜の梟〉は三十路超えてるから色々あって当然かな。

 有名冒険者の若い頃の武勇伝はわりと話題に上ってるからギルドの飲み屋や食堂に行けば今も語り草だ。


「ほれ、時間が無くなるぞ。用件を話す」

 ギルマスが着席を促すけど席が足りないんだぜっと。

 年功序列で〈白夜の梟〉に譲ったら微妙な顔をされた。権力的にも考慮してますって。しれっと。


「祝勝会だか祝宴だかには我々ギルドの長たちも貴族の重鎮たちも集まる」

 んー、利権とか言い出しそうなメンツだな。

 万が一の時は、全部放り投げて家族連れて国出てくよ。

 数少ない領民には申し訳ないけどお祖父様に管理が戻るだけなので余程のことはないはず!

 父さんたちが必死に開拓、対策した土地だから腹立たしいけど。

 ベン兄さんだけはもう道連れは無理かなぁ。


「こらそんな怖い顔するんじゃない」

 あら?冒険者モードだと顔も自由になっちゃうよ。てへ。


「今回、爆炎と白銀は一気にAランクになったことで注目度も高い。まず手は出させる気はないが・・・お前たちは俺の庇護下にいると思わせた方が良いと思っているはどうだ」

 ギルマスが真剣な顔で聞いてきたが、どうだと言われても。

 困惑してジャックの顔を見ると同じような感じだった。

「別に紐付きにする気もこの王都に縛りつける気もないぞ?」

 私たちの不安に対しては承知の上みたい。

「それはギルマスにメリットがないんでは?」

 〈爆炎の翼〉のコールがボソリと言う。

「メリットォ?んなもんはどうでも良いんだよ。俺はなぁ、若い有望な連中が食いもんにされるのはたくさん見てきた。やっと物申せる立場になったんでな、糞共のホゾを噛む姿を眺めてやるんだよ」

 SSランクになったらいくらでも物申せそうなのに、王都のギルマスでやっと言えるのかな??


「ギルマスは若い頃から結構色々言ってきただろう?」

 アウルたちが突っ込むと、ギルマスは歯を剥き出しにする。

「どんだけ偉くでもギルドのジジイどもも貴族のバカヤロどももうぜえことしか言わねえんだわ」

 無茶苦茶ヘイト溜まってるぅ。

「まぁ、それでも高ランクである強みはあるがな。ウルセェけどよ」

 どんだけうるさいんだ。


「俺の庇護下にって言っても俺は特になんかさせる気はねぇよ。ただジジィどもが悔しがるってくらいのメリットだわ」

 どんどんガラが悪くなってる。

 ストレス溜まってんだね。


「リンク、ジャック。俺は受けておいた方が良いと思うぞ。ギルマスは腐っても王国最強な冒険者だ。何かあれば絶対に助けになる」

 アウルの後押しにジャックも私も受け入れることを決めた。

 もちろんルカの肯定もあるよ。


「それともう一つ、我ら〈白夜の梟〉と友誼を結ばないだろうか?」

 アウルからの提案は、今いる三パーティは人数が少ないからいざとなったら合流して助け合う関係になろうってことだそう。


「それは私たちにはありがたい申し出だけどアウルたちには私たちレベルは必要ないんじゃ?」

「そうだ。俺たちはリンクたちよりは弱いから足手纏いになる」

 ジャックたちは少し顔が青い。雲の上の〈白夜の梟〉からの誘いは恐れ多すぎるってなるのも仕方ない。

 あと、私たちが強いのは所詮チートだから、ジャックたちの方が実際は伸び代があるしすごいと思う。


「お前たちはこれからどんどん強くなる。心配はしていない」


 多分ギルマスと同じで私たちに箔付けしてくれてるんだと思う。

 手を出されないようにって。


 ルカの石を確認。

 先輩に甘えようって決めた。


「「よろしくお願いします」」

「「「「「お願いします」」」」」

 ジャックたちも覚悟を決めたみたい。


 Aランクに昇進が二組、さらに〈白夜の梟〉とギルドマスター・ライナスの庇護を受けた

ってしばらく騒ぎになるんだろうなぁ。




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