第33話
ちょっとバッチい表現があります
お食事中、おやつ中、リラックス中の方はお気をつけください。
読み飛ばす方は、ドレスを作ってもらったこと、ベン兄さんの新しい婚約者と会えることになったってことで次回をお待ち下いませ。
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衣装選びに一息ついたら、扉向こうが騒がしくなった。
「お祖父様!!入れてくださいませ」
従姉妹のジャビナが大騒ぎのようだ。
「何用か」
溜め息を吐きながらジャビナの入室を許可すると物凄い速さでドレスを見つけてあらゆる角度からチェックしたよ。なんだコイツ。
「お祖父様!!リィンだけドレスを作るのはズルイではありませんの!私だってアンドレイのドレスは持ってないのに!!」
今着ているドレスとは確かに傾向が違うけど、それが趣味ならアンドレイのは無理じゃん?
「浅ましい。そなたたちには予算を渡しておるのだからその中から好きに作ればよかろう」
「でもそれはお祖父様のプレゼントですわよね?私にもください」
お祖父様の眉がめっちゃ吊り上がってる。
「そなたには誕生日も祝日にも渡しておるだろうが、ごうつくめ」
お祖父様が全く取り付く間もないので標的が私に変わったようだ。
「リィンなんか田舎者の地味ドブスにアンドレイのドレスは不相応よ!私が着てあげた方がドレスだって喜ぶわ」
今まさにアンドレイさんが調整入れていたドレスを引っ張る。
「離しなさい。そなたは人の美醜をどうとか言えるほどではないぞ」
お祖父様が辛辣だよ。
「ドブス・・・ねぇ?」
ルカが低い声を出して、
「うちのリィンがドブスならお前なんだろうな。ドブに落ちたカエルか?腐ったナマズの方がまだ良い顔だな?その濁った目もいらないな?えぐり出してたろうか?」
と、指先を本当に目に入れんばかりに押し付けた。
淡々と抑揚なく話すルカ話すマジ怖い。
「なななっななななっなな・・・」
ジャビナはガクガク震え出した。
「うちのリィンはお前の千倍可愛いんだよ。マジ消えろ」
普段は「ああ」「うん」「そう」くらいしか言わないルカがバッドな口調でジャビナを追い込む。
私が千倍可愛いって。ルカも千倍カッコいいよ。惚れるぅ。
「おおおっお父様には言いつけてやるからぁ」
捨て台詞を置いて逃げちゃった。
あんなこと言うの本当にいるんだ。
ママに言いつけてやる~!だっけ。懐。
「あれがワシに何か物申せるでもないのだが?」
ですねっ。でもうるさそうなのは勘弁ね。
「セニョーラ・アンドレイ、すまなかったな」
「いーえぇ、あのくらいのことはどこの家でもありますのよ。姉妹格差だとか真似っ子とか色々な揉め事がねぇ」
しかしジャビナ、私のドレスなんか奪ったとしても胸がはち切れるだろうし、尻は入らないと思うのよ。私は胸は控えめだし、鍛えてるから一応スリムボディなの。
誰だ。メリハリがないとか言うの!?
いっそ貸して、夜会で胸はち切れてしまうのもアリなんだけど!
「って言うか、あいつ風呂入んないの?なんか臭う」
ぶっは。ルカ容赦なし。
「あー・・・、非常に申し上げ難いのですが、今王都では自分の匂いが一番のフレグランスだと言う風潮がございまして」
ん?
「一部の方が間に受けているだけなのですが、匂いが極まるほど人を惹きつけるのだとか」
何それ?歪んだ性癖の人でもいるの?
セニョーラのお針子さんの一人が羞恥プレイを受けてるかのように言い難そうにしてるよ。
「不衛生だな・・・」
「やめるように言ってあるんだが、アレは婚約の話もなく焦っておるからな」
お祖父様も非常に形容し難い顔で呟く。
あー、モテたいのか。でもアレじゃまともな男は寄ってこないよ。
「両親も間に受けておるからな・・・」
ゲ。バッチィ。この屋敷バッチィ住んでる。えんがちょ。
「それどれくらいの割合で流行ってるんだ?」
「・・・三割くらいかしらぁ?」
「そうでございますね。おモテにならない方や性に奔放な方達に流行っているのかと・・・」
ひえぇええええええ。
王都やばい。おうち帰りたい。
「学園の時はさほど気にならなかったが・・・」
「夜会に出られる方々のお噂ですから」
学園ではひたすら人を避けてたけど、教室とか逃げられないとこで臭わなくて良かった。
アンドレイさんはお客様を選べるので、そう言ったお方はお断りしてるらしい。
噂を間に受けてしまうような凝り固まった頭の方は、デザインやお値段のことで問題を起こしがちだからだそう。
ドレスの調整とデザインの打ち合わせが終わったら、「楽しみにしてらしてねぇ♡」とバチコーンとウィンクをして去っていった。
おネエさま・・・。
お祖父様の部屋を出て私たちはあてがわれた部屋に戻り、お茶を飲む。
「ジャクリーンって香水臭かったけど、そっちじゃなくって良かったね」
「婚約者がいるんだからモテなくて良かったんじゃない?」
なんか変な宗教くさいよね。
私は毎日風呂に入りたいよ。マートムではさすがに毎日は無理だけど〈洗浄〉はするからね。
「その流行は早く廃れて欲しいな」
「まったくだ」
「それがな・・・高位貴族にもいるらしい・・・」
マジか。
「王宮の夜会に出るの嫌なんだけど」
「デビューしなくていいや」
「俺も帰りたい」
ジャビナより濃ゆいのいたら絶望する。
なんだろう。頭痒くなったり、お股の病気になったりしないの?
背中脂ギッシュで吹き出物出来たりしないの?
あ、さすがに濡れ布巾で拭くくらいはするか。そうだ。拭くよね。うん。
「まぁなんだ。なるべく窓際を陣取れ」
解決方法が雑だ!兄さん!!
「挨拶を少ししたら即逃げよう」
「そうだな」
祝宴と夜会がより一層楽しみじゃなくなった。
「そういえば、新しい婚約者はどうなの?」
「ん?そうだな・・・控えめで優しそうで花の香りがした」
ポッと耳を赤くした兄さん。
花の香りって。
「伯爵家を継ぐために学んできた人だからしっかりしたお考えをお持ちのようだし、居心地のいい人だと思う」
かなり好印象のようだ。
兄さんが喜んでるようなので安心んした。
「夜会の時に紹介したい」
「わかった」
「楽しみにしてる」
私たちのことを利用しようとしない人だといいな。
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