第32話

 お祖父様の屋敷に戻る前にマントをお貴族仕様にしてから戻った。


「リィン、ルカ、戻ったか。ファナとネルは?」

 兄さんはすでに目の下にクマだ。男爵家に行くのと由緒ある伯爵家に行くんでは重圧が違うよね。

「ちゃんと預けてきたよ。手紙も飛ばしてきた」

「そうか」

「信用できる相手に任せてきたから安心してて」

 なんてったって家族に預けたから。

 転移ができることは家族にも言うつもりがないから嘘ついちゃった。


 着替えがてから風呂に入ってくつろいでいたら、伝心鳥が飛んできた。


『話しがあるから祝宴の前にギルドにあつまれ』

 ぬー、ギルマスからじゃ断れない。

『諾』

 魔力を注いで飛ばしてやった。


「なんだろう?」

「さぁ?」


 お祖父様に呼ばれたようなので、風呂で解いた私の髪をルカが編み込む。

「それノミ取りしてるみたいだな」

 誰が猿か。兄さんは笑うけど、細かい作業なのよ。

「不思議なもんだ。男女の双子でここまで仲が良くて同じような格好でなぁ」

 他の双子にあったことはないから知らないけど、ルカが寛容で私に優しいだけかなって思う。

 普通に考えたら冒険者もやらないだろうし、学園も繰り上げようってならないよ。

 私の髪が仕上がったので今度はルカの髪を

編み込む。基本、双子コーデなので同じような感じに仕上げる。

 編み込みの左右どちらかで見分けるとか必要ないしね。


「爺さまと話してくるけど兄さんは行く?」

「あー、一応行くかぁ」

 二人とも嫌そうにため息。


「もうスッピンでいいか」

「面倒だし」

「お前たち、あの平凡メイクは逆にアンバランスで一部の奴には気にされていたぞ」

 ブス地味メイクが!?

 兄さんが素顔知ってるからなだけじゃ?


「元の作りが良いから誤魔化しきれない配置の美とか鼻筋や横顔、よく見るとわかるんだ」

「「ええぇー」」

 

 私は簡易ワンピースを着て、ルカは皮パンにシャツにジャケットを羽織って。

「髪、編む?」

「編まないわ。流すだけで良い」

 いっそ三人一緒でも面白かったのに。


 私だけ軽く化粧をした。


 お祖父様の資質に向かう途中、従兄妹がいてポカンとしていたけどスルーした。


「お祖父様、今良いですか」

「入れ」


 ジョルジュが扉を開けてくれる。

 お祖父様は相変わらず、書類と睨めっこして顰めっ面。


「子供たちは?」

「信頼のできる人に任せてきました」

 ちゃんと二人を心配してくれてるんだ。

「そうか。それならば良い」


 お祖父様がこちらにやってきて私たちを隣の部屋へと連れていく。


 ドレスと礼服がずらっと並べてあってお針子らしき女性が三名いた。


「・・・」

「懇意にしているセニョーラ・アンドレイの衣装を持って来させた」

 男名に夫人付け?


「オーダーは間に合わないがデビュー向けの試作品でまだ表に出ていない物だから良いだろう」

 ほほう?

「ルカもベンも数着見繕うように」


 私たちはなぜか採寸されたて、着せ替え人形になった。


「細いですわぁ!なぁにこの薄さ!ご飯食べてらっしゃるのぉ?」

 お針子さんと思っていたの三人の中にちょっと背丈の高い人がいてその人がアンドレイさんだった。

 ええ、そうね。おネエ様だったわよ。

 見事に女性に見えたのに声が太かった。

 お胸は?その腰ってコルセットで!?色々気になるけど気にしてはいけない。


「王都の令嬢にはいないわぁ!肩周りとお腹がバッキバキな女性ってス・テ・キ♡」

 私の腰をコルセットでグンッと締めながらハスキーボイスで囁くアンドレイさん。

 それって褒め言葉かなぁ?


「でもぉセクシーな肩は見せつけない方が良いわぁ」

 アンドレイさんは肩周りから袖口までレースをつかってドレスを勧めてきた。

 露出が少ないのは嬉しいのでそれにした。

 白を基調に銀糸でたっぷり刺繍とオーガンジーでボリュームをつけたスカートは華やかだ。


「これにぃリィン様の蒼い瞳の色のビーズをたっぷりつければ良い感じねぇ」


 ルカも銀がたっぷりでジャケットの裏に物凄い刺繍。ヤンキー学ランの裏みたいな感じ?

「いやぁん。双子コーデって可愛いわぁ」

 アンドレイさんのテンションが爆上げだ。

 もう双子で可愛いとか言われる年齢じゃないんですけど。


「二人が王都にいたならこんな衣装を子供の頃から見ていられたのか、残念だったな」

 お祖父様さまで何言ってるんだか。

「うちの弟妹は可愛いんだ。なんでも似合う」

 ベン兄さんも大概だった。


「セニョーラ、祝宴が済んだら、二人に水色の衣装と青の衣装を頼むぞ」

「お任せあれ♡」

 え、他にも何か出ないとなの!?

「お前たちますベンの婚礼に出ない気か」

 おお!!そう言えばそうだった。


「家族も呼ばないとだね?」

「お前たちがいれば、妙な者も退けられるだろう?」

 んっ。激しく面倒だけど、ベン兄さんの祝いに出ないのは有り得ないか。


 くっそう、お祖父様の喜ぶ方向にばかり進むな。


「家族全員がガドルを離れるのは心配だな」

「なれば領主代行を向かわせよう」

 ベン兄さんが渋い顔をするとお祖父様がサラリと解決方を出す。


「まぁ最悪、強行軍でハインツとジャンだけ騎馬で行き来すればなんとかなるだろう」

 何気に鬼だな。

 父さんはもうわりと歳なんだぞ。


「あらぁ?じゃぁソニアちゃんたちにも衣装いるわねぇ!まいどぉ」

「おお、ソニアとアマレットのサイズはどうだったか。ファナとネルもリィンとルカに合わせてもらおうか」

 アンドレイさんは綺麗な見た目なのに揉み手でクネクネ。商売人だった。


「サイズなら魔法鳥で聞けば良いわね」

 アマレット姉さんはともかく母さんは長いことドレス用採寸なんてしてないと思うな。

 実家で手作りするワンピースのサイズじゃダメだろうし。


「ソニアちゃんのは昔のサイズを基本にあとで調整できるようにしておくわねぇ」

 

 んーっ、家族全員で往復二週間前後・・・。

 どうしてもって時には転移魔法のことバラすしかないかなぁ。



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