第21話
ファナとネルは雑貨屋さんの可愛らしい装飾や色々な果物が並んでる果物屋、全てを楽しそうに見てる。
王都で暮らしたことがあれば当たり前の光景だから、さして物珍しくもない物を喜ぶのが微笑ましくも切ない。
嫌がらせがなければ、母は社交シーズンに実家に泊まったり友人宅に訪ねたりと、子連れで王都まで来たりもしてただろう。
二人は帽子を深く被らせてても可愛らしさが消せなくて街行く人の目を捉えがちだ。
うちの子達は可愛い。それは仕方ない。
愛でたくなるのもわかるよ。
でも悪そうな輩にはルカと二人ガン飛ばしてやる。
ちなみに兄さんはイケメンだけど覇気がないのと精神的に若干くたびれてるので風景に溶け込みがちだ。ある意味羨ましい才能持ちかも?
「リィン姉ちゃん、あれなぁに?」
ネルが興味を持ったのは綿菓子見たいな〈ツーロウ〉、多分私みたいな前世持ちが複数いたんだろうなって食べ物は各地にある。
砂糖は高いけど綿菓子なら少しで済むからちょっと良い商店街には甘いお菓子も売ってたりする。
「ツーロウって言うんだよ。ご飯の前だけど食べれる?」
「「うん!!」」
食べれないとは言わないよね。いい笑顔だからお姉ちゃんなんでも買っちゃうよ!
「ご飯前だから二人で半分こな」
ってルカがサクッと買っちゃって二人に抱きつかれてる。
やられた!!!
「兄さんも食べる?」
仕方ないから兄さんに言ってみたよ。
「いらん、俺はつまみがいい」
オッサンだった!!
ぶらぶらして家族にまたお土産買って、ファナとネルには服をたくさん買っちゃった。
やっぱ目の前にいると似合っちゃう服は全部買いたいよね。
「お前ら母さんに怒られるぞ」
ええ~、たまには良いじゃない。
荷物は全部兄さんに持たせてる。富裕層に見えない私たちがマジックバックに入れるのみられたら騒ぎになるからね。
屋台の肉串とかネルが食べたそうだったから夕食のあとでねってお土産に包んでもらった。
宿に戻るとジョルジュと宿の主人が迎え入れてくれた。
「ご夕食はお部屋になさいますか?」
「そうだな、子供達がいるから部屋にしてくれ」
兄さんが答える。兄さんってばいざとなったらキリッと出来るのね。
貴族はマナーが完全になるまで公の場での食事に子供を同席させない。
だから部屋にしないとバラバラになっちゃうんだ。面倒。
荷物は宿の人が部屋まで運んでくれた。
ジョルジュは基本ほっといてくれるから助かる。お堅い執事なら街ブラについてきたり、買い物にあれこれ指図したりしてただろうね。
流石に室内で帽子はダメなので脱がして軽く〈隠蔽〉をかけた。これで給仕にはぼんやりした顔に見える。
夕食は軽めのコースだった。
子供がいるから食べにくい物とか味が濃い物は無い。
大人用と子供用はもちろん違うんだけど細かい配慮がされてるので好感が持てる。
私はファナとネルの世話をしながら一緒に食べる。
「おいちー」
「うまーい」
子供達は家では出ない綺麗に盛られた料理に喜んでる。
「まぁまぁだな」
「お前贅沢だな」
ルカが肉のソテーを食べて言うと兄さんが呆れたようにルカの肩を叩く。
「リィンの飯食べたら舌が肥えた。仕方ない」
もう、ルカったら。何も出ないからね。
「リィン、そんなに料理が上手いのか?」
あれ?私が実家にいて手伝い始めた頃って兄さんは学園か。なら食べたことないね。
「うまいって言うか調味料にこだわってるの」
家に戻ったら食べてもらおうかな、
食後のデザートは桃コンポートっぽいのが出た。高そう!祖父のおかげでラッキー。
「おいちー」
「甘ーい」
兄さんは甘いのは要らないって言うので二人に半分ずつわけた。
お風呂があるので私はファナとルカはネルと兄さんは一人で入った。
流石に寝るだけになったら地味メイクは剥がしてる。
「お前ら本当に逆詐欺だよな」
兄さんが笑う。
「素顔で歩けないから仕方ないじゃん」
「まぁなぁ、正直母さんより目立つと思うんだがなんで母さんなんだろうな?」
確かに王都で出会ったご令嬢の中でも抜群な美人だけど。ってそっくりな私が言うのもアレなんだけどさ。
生涯執着しちゃうほどかな?とは思うよね。
「姉ちゃん一緒に寝よう」
「えー俺は?」
ネルが私を誘ってくれて、ルカが拗ねたらファナがルカに抱きつく。
「じゃ私と寝よう~」
途端に機嫌が直った。
まだ早い時間だけどお誘いは断れない。
兄さんはまだ寝ないそうなので特別にいつか飲もうと買っておいたお酒と柔らかジャーキーを出してあげた。
「飲みすぎないでね」
そういえば大人になった兄さんとこんなに一緒にいたことなかったかも。昔はファナのように兄さん達にまとわりついてたのにね。
部屋はふた部屋繋がってて、本来は片方に執事や侍女の部屋なんだけど今回は兄妹ら五人でベッド三つ使わせてもらってる。
なのでベッド二つの方で私たちは寝ちゃう。
ファナとネルが一生懸命話すのを聞きながら睡魔に負けた。
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