第15話

 岩場に向かう途中、逃げてきたのか取りこぼしたのか気の立っているゴブリンやワーウルフがうろうろしてたけど周りに誰もいないから魔法使っちゃったよ。面倒だから。


 ジャック達が応戦している音が聞こえてきた。近くまで行って状況を確認。


 なんでかブラックサーペントと対戦中。

 ここらでは出ないはずなんだけど、今日見た中で唯一美味しく食える!

 肉少し分けてもらえないかな。


「アイスエイジ!」


 ルカも同じ事を考えてるようで早速サーペントの動きに制限をかける。


 ジャック達につけられた傷だいぶ弱ってるから簡単かも?


「ジャック!私たちでとどめ刺しても良い!?」


「おう!任せるわ」


「ウォーターガン!!」

「エアカッター!!」


 他の魔物はもう動けないか絶命してる。

 死んだ死体の核、魔石をぶんどっておく。


 あ、人いる所で魔法使っちゃった。ま、いいか。

 初期魔法だしー。


「リュカー!今日は蒲焼き食べるぞー」

「おーう、三段にしてくれ~」


 いやぁ久し振りに美味しそうだから気持ちが昂っちゃう。


 ジャックたちも他の獲物を片付けて素材、魔石を回収。


 怪我人もいるけど怪我より疲労のがキテるな。数が多いのはかなわんよね。


「お前らあっちは片付いたのか?」

 ジャックが肩回しながら近寄ってくる。


「終わった終わった~。オーガロードいたよ~」

 サーペントの皮を剥ぎ取り運びやすいように輪切り~。ジャックたちもマジックバッグ持ってるけど制限があるみたいだからねぇ。


「ゲ!」

「マジかよ~そっちのが大変だったろ?」

「強いけど洞窟の中の巨体なんて動きの制限キツすぎるじゃん?」

「でもあいつめちゃくちゃ頑丈じゃねぇか!」


 ジャックと盾士のコールが落ち込んじゃった。

 早さに勝ち負けないよ?条件違うし~。


 ってこれ卵持ってる。グローい。

 でも高価買取だ。ラッキー。


「ジャック~これ分前くれる~?」

「おう、折半でいいかぁ?」

「えっ?マジで?男前~!!惚れる~」

「おうおう、惚れてくれー!」


 最後に留め差しただけなのに!

 お肉と皮少しでも御の字だよー。


「その代わりメシ作ってくれ」

「お、そりゃ良い!!リンク、頼むわ」


 ジャックたちはわりと長い付き合いだから隠し事とか知られてるっぽいんだよね~。


「惚れるのやめたー」

「おい~」


 食事は遠征時にルカと二人で食べてる時に匂いに釣られて覗かれたのが始まりで、かち合うと材料や調味料を山盛りくれるから一緒に食べる。


「まぁ良いけどさ~ここに来てる連中分作るのはしんどいよー?」


 まだ調査の分で追加くるし。


「ああ~かなり人数いるなぁ。ギルドから補給あるんだろ?帰る連中が移動したらで良いかー」


 まぁ食料は基本各自で、こう言った緊急依頼の時はギルドから物資が出る。

 足りてる時は個人から分ける必要はない。


 ただ何時もうるさい連中はいるから極力現場では携帯食料で済ましてる。



「ジャックたちは調査も残るの?」

「おう、お前らもだろ?明らかに発生がおかしいからなぁ」


 いや、本音は帰りたいよ。でも強制依頼受けちゃったしね。

 強制って言っても断れないことは無くもない。評価が下がるだけ。下がったところで問題ないんだけど。一応恩は売っておかないとね。


「この辺りで高レベルな魔物出たことないよね?」

「まずここらでオーガなんて出たことねぇ」

「サーペントもな」


 ここらだとゴブリンやレッドウルフ、まれにワイルドボアだったかな。


 街から遠いから初心者がなかなか来れないから逆に嬉しくもないスポット。


 休んでた他の冒険者が動けるようになったからみんなで森の入り口に移動する。


 私たちはこのまま調査に行きたいところだけど、追加の人を待たないと。


 蒲焼き遠いなぁ。


「ジャック、洞窟の中に人骨が結構あった。馬車道から誘拐されたかだと思う」

「あー・・・街から攫われたって言う報告は出てなかったはずだ」

 

 商人や辻馬車かな?でもそれを踏まえても馬車道までは遠い。

 行動範囲が広かったと思うと人知れず消えた被害者が多いはず。


「行方不明者の報告もあまり出てなかったぞ」


 いくら旅人って言っても関所や門番、各ギルドで情報は回る。報告が出てないのはおかしい。


「人が関わってる可能性あるかぁ?」


 ジャックたちが眉を寄せてる。かなりきな臭いもんねぇ。


「王都に報告か?面倒だな」


 ジャックたちも本来は王都や主要都市を根城にする事を望まれてるけど、権力を嫌って田舎を転々としている。


「私たちはパスだな」


 調査はするけど王都に行くのは嫌だ。


「へぇへぇ、俺たちの仕事ですよー。お前らも早くランク上げろ。ポイントは十分だろう?」


「俺たちはほどほどでやりたいからランクはこのままで良い」


 ルカが答えるとジャックが唇を尖らせて拗ねる。


「あーあー、俺たちもそこで止まっておけばよかったなぁ」


 なまじ実力があってスピーディーにランクが上がったから面倒ごととかシガラミに気が付かなかったらしい。


 権力でねじ伏せられないと言っても所詮はギルドに使われてるからね。ある程度は妥協しないと稼げない。


 あちこち指名依頼で呼ばれる。権力で無理やり強制しようとされたら断れるんだけど、ダンジョンのある街の出入りを制限されたり地味な嫌がらせもある。


 まあまあで止まっておけば貴族に興味を持たれない。

 Cランクはその中のギリ。

 この国では強い方だけど、ランクで見ればAやB、当然Sの方が虚栄心を満たせる。


 ほんとくだらない。

 貴族の横暴が罷り通らないようにしてると言っても完全に逃れることができないんだよねぇ。腹立つことに。


 まぁいざとなったら別の国に逃げる。その為の身分証だもん。


 入口に戻ったらまたお嬢様がキャンキャンやってた。


 元気だな。



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