第12話

「この近辺で出ないのが出てるな」

「オーガキングとかは《爆炎の翼》が出てるならもう片付いてそうだけど」

「数が多いのはキツイなー」


 近くにダンジョンは無いし、大物は少ないから高ランクが待機していないギルドの活動範囲にゴブリン村なんて出来ているだけでも大問題で、それ以上にオーガキングなんて相手したことがなさそうな冒険者がたくさん現場に出ているので、大勢の命がない場合が想定される。

 大したことではないと判断した私たちの甘さが悔やまれる。


 報告もして自分たちが出なくても良いか確認もしたから責任はないけど、後味が悪い。


 

「あのお嬢様が出てるなら《隠密》使いたいけどBランクがいるんじゃ誤魔化せないよな」


 自分たちより魔力が多い、もしくは《鑑定》《看破》持ち相手には効かないからね。


「まぁ諦めるしかないね」


 せっかく王都を出て気ままに動けるようになったのに。

 流石に指名受けて高ランク魔獣と戦闘するのに誤魔化してたら何言われるか。


 《身体強化》《駿足》で1時間くらい走ったところの森の入り口でボロボロの冒険者たちが仮設のテントを張って転がっているのを見つけた。


「おお、リュカ、リンク。来てくれたのか」

 顔見知りのおっちゃんが声を掛けてくれた。服や装備がかなり傷んでやられてる。


 ここにいるのはゴブリンの群れを担当して、怪我をして一旦引き上げて休んでる冒険者達のようだ。


 中にはまだ大勢が入ってて、ウルフの群れやオーク、オーガとそれぞれ点在している場所に向かったままだそう。


 《気配探知》で探ってみると大物と戦っている気配があるところと、疲弊し切って固まって休んでる?ところ、ゴブリンの大多数は掃討出来てるようだけどオーガやウルフは多く生き残っている。


 休んでいる彼らにギルドからの補給品と言ってポーションや食料を渡す。


 ルカに優先でどこに行くのが良いか相談してみる。


「大物のとこ手助けがいるなら入って、要らなそうなら休んでるのを外に出そう」


「これスタンピードの予兆とかじゃないよね?」


「わからない」


 森の奥で《爆炎の翼》が戦っているところまで到着した。

 Bランクの彼らが手こずっているのが不思議だったが現場で納得した。

 すでに倒れているオーガロードが数体。今相対しているのがオーガキングなのだ。

 しかも数体は過去戦ったオーガと比べると完全に変異種だと思う。


 私たちは戦闘中の彼らにポーションを投げ渡して戦闘に乱入する。


 普段は魔力でゴリ押しだけど大勢の目撃者に中で自分たちの能力を見せる気はない。


 選り好みして良いような状況でなくてもここを切り抜けたら自由が無くなるなら意味がないし。


 ルカと二人で刀を使いオーガキングを取り巻くロードや他の小物達を薙ぎ払っていく。


 そう、オタ心が燻り過ぎて。知り合った鍛治師にお願いして打ってもらった特別製日本刀。

 ファンタジー素材を使って洋剣の強度も取り入れた自分的最上物。


 ルカは太刀と打刀を作ってもらったけど今は打刀を使ってる。

 私は脇差と短刀を作ってもらった。戦闘スタイル的に脇差がちょうど良かった。


 切れ味最高なのでオーガの腕や脚がスパっと飛んでいく。


 ちなみに私の腕力はあまり強くないので戦闘時は《身体強化》でやってる。魔力が多いからなんでもわりとゴリ押し気味。



「おい!リンク、リュカ!こっちに腕飛ばしてくんじゃねぇ!!」


 《爆炎の翼》のリーダー、ジャックが文句言ってくる。ごめん。わざとじゃないんだ。

 ちなみに彼らとは依頼で一緒になったりランク試験に時などに知り合ってる。


 突然戦況が変わったことに怒りを露わにするオーガキング。だいぶボロボロなのに丈夫だな。


 ロードや他の魔物を粗方潰し切った後改めてオーガキングを見るとすでにジャックがトドメを指していた。

 数が多過ぎて手こずってただけか。


「おう、お前らが来てくれるとはラッキーだったな」

 

 私たちは全くラッキーじゃないんだけどね。


 ジャックの仲間たちも無事だし次の場所に行かないとなんだけど、オーガの変異種は持ち帰りかな?


「ジャック、それ持って帰れる?」

「マジックバックがあるからイケるぞ」

「じゃそう言うことで」


 魔物の素材や魔石の収集は応援の冒険者に任せれば良いよね。


「おい、お前ら他の応援に行くのか?」

「そーいう依頼だから」


「俺たちも行くから手分けしようぜ、どこに行く?」

 ジャックがルカを捕まえて提案してくる。


「どう考えても寝てないだろうし食事も取れてないだろうから少し休めば?」


「他の現場の連中も同じだろうさ。先に入ってる連中もいるのに俺たちだけ休めるかよ」


 一番大変な場所を担当してたくせに何強がってんだか。

 と言っても言ってる事は正しいから私が前世の記憶を頼りに作ったエナジードリンクとシリアルバーを渡してあげる。

 ジャック達は高ランクなだけあって人の情報を無闇に話したりしないからサービスね。


「サンキュな。お前らの食料は美味いしパワーアップするから有り難い」


 私たちは洞窟、彼らは岩場方面に行くことに決めて離れた。





 

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