第8話
食事の前にお土産を両親と兄夫婦に渡そうと居間に降りていくとジョン兄さんが微妙な顔をしてる。
「ジャクリーンは前から少し行動がとっ散らかっていたが、ちょっとダメな傾向だな」
ちょっと?
かなりヤヴァイいでしょ!
「ジャクリーンの実家は正直言ってあまり評判が良くないのよねぇ。ベンの婿入りもちょっと不安だったけどウチだってあまり良い家とは言えないから反対もし難いでしょう?」
母さんが困り顔で言うけど、ウチは貧乏でも人に後ろ指刺されるような悪いタチでもない。いくら婿入りとは言え反対しなよ。
「いや、流石にあれは将来的に大きな問題を起こしかねないレベルだから身内にいたらダメなヤツだろう」
ルカが無茶苦茶嫌そう。
後先考えないところも自分本位なところも、ルカが年下なのにいきなり交換しろだなんて頭が沸いてるのもキツいでしょ。
「ほんとベン兄さんなんであんなのと結婚しようとしたんだ」
「ベン兄さんって昔アニーが好きだったよね?随分好みが変わったね」
アニーはハンナの娘で大らかで朗らかで笑顔の可愛い人。兄さんが学園に通うために王都に行ってる期間に幼馴染の男性とサクッと結婚しちゃった。まぁ兄さん全然アプローチしてなかったし、アニーも気付きもしなかっただろうけど。
ジャクリーンはケバいタイプでまぁ肉感的?目もちょっとキツめで気が強い感じ。アニーとは真逆だと思う。
「まぁ淡い初恋と実際の恋は違うんだよ」
ジョン兄さんが私たちをまだまだ青いなって顔で見てる。ひどくない?
「肉欲に引っ張られる方が青いだろう」
ルカがスパーンとぶった斬る。
肉欲って。ルカちゃんったら表現が!
「いや、ベンも別にあのタイプが好みではないから・・・流石にまだ手をつけてないはずだが」
ジョン兄さんもなに言ってくれてんの!
「別に爵位とか拘って無かったから選び放題だったでしょうしねぇ」
アマレットさんも不思議そうに言う。
「あー、あまりにぐいぐい来られて他の令嬢も薙ぎ倒して熱烈だったから絆されたとか言ってたよ。薙ぎ倒すのはどうかと思うんだが、あれくらい熱意があればウチと縁戚になっても嫌がらせなど気にしないだろうって判断したらしい」
選考基準が酷い気がする。
しかしジャクリーン、ただの面食いなだけなんだろうな。
「私のせいであなたたちが肩身の狭い思いをさせちゃってごめんなさいね」
おっと、母さんがまた落ち込んでしまう。
「母さんのせいじゃないよ。相手がおかしいんだし」
「この領地はもともあまり土地が肥えてないんだからまだ食べれてる方だよ」
ジョン兄さんとルカがなだめに入る。
父さんが必死に領民と頑張って飢えないように土地を改良したり災害対策も色々して、どんどん上向きになって来てるんだよ。
この領地はほぼ放棄されてる状況だったが、両親を守るために祖父が敢えてここを与えた。嫌がらせも協力する商人や業者が居なければできないしね。
それでもちょこちょこ行商人を買収したり、国の役人に無茶させてこの地に介入しようとしたりしてるけど祖父が色々手を回してくれてる。
もうアイツいい加減失脚してくんないかな?って思うけどなかなか狡猾であと一歩足りないところで逃げられるらしい。
気分を変えるため、お土産をバーンと広げる。
女性陣には普段使いのストールや化粧品、茶葉や菓子などこの辺りでは手に入りにくいレベルの質の物を買って来た。
たまの贅沢にね。
「まぁ可愛いわ♫」
さっきまでの悲しい顔が一気に消える。
「これは母さんに。鈴蘭の香りの化粧水だって」
「こっちはアマレットさん。お茶が好きだと聞いたのでローズティーと蜂蜜」
アマレットさんは実家がかなりお金持ちだから定期的に色々送られてくるようだけど、気持ちだけね。
「まぁ、私の好みを知っててくれたのね。嬉しいわ。ありがとう。今夜の食後に早速頂きますわね」
ローズティーの匂いを嗅いで嬉しそうにしてくれる。さっきのジャクリーンに相対してなんて気遣いのある優しい人なんだろう。
父と兄さんたちにはお酒と干し肉。
干し肉は携帯用じゃ無くて晩酌用に味付けされた柔らかめの。前世で言うとジャーキーかな。ナッツ類も買って来た。
父さんは甘党の辛党なので果物の砂糖漬けも。
あとはこの辺りで買うには割高の香辛料や、常備用の薬も。これはお土産じゃ無く買い出しみたいなものね。
「お前たちこれだけの物、かなりしたんじゃないのか?」
ジョン兄さんが心配気に聞いてくる。私たちは仕送りも少なめ(貰わないと気なされちゃうから)でやって来たので逆に実家に送金したり適度に物品を送っていたからお金の出所が気になるのは仕方ない。
ちょうど父さんも部屋に戻って来たので、そろそろネタバラシ的なことを、今後の希望を伝えようとルカに目配せをする。
夕飯を食べたあとに家族みんなに話す時間を取ってもらうことになった。
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