第3話

 待ち合わせ場所で護衛対象の商人カボスさんと従者のテオさん、馭者のユーリオさんに挨拶して。

 そして共同護衛で、冒険者のジュリーさん(迫力美女な公爵令嬢)とマグナムさん(おそらく護衛)を紹介された。

 近場だから他のパーティが来るのか確認してなかったよ。失敗。


 アガルの街までは2日くらいで、途中のパスクの町で一泊なので、そこまで危険はない。下級魔物くらいしか出ないし、野盗なんかは街から街が近くてすぐ追っ手がかかるルートだから滅多に出ない。


 馬車は幌馬車で、人が乗れるのは馭者席2人と荷台の前部に4人くらいまで、後部が荷物。後部に1人見張り、馭者席に1人の予定だったんだけど分担どうするかな。


 って言うかジュリーさん、お尻に自信ありますか?荷馬車結構きついんだよ。


「よろしくお願いしますわ。ジュリーと呼んでくださいませ」

「・・・マグナムっす」


 まんまご令嬢な挨拶をされちゃった。

 マグナムさん、まさかのありがち設定のお嬢様に拾われた系のキャラじゃん!


 ゲームの攻略対象。名前はダグラス。マグナムってなんだよ!?


 ジュリーさんは、宰相の娘、ジュリエッタ・デ・アロンド公爵令嬢。あの宰相さんが娘さん追い出すなんてしないと思うんだけど、何がどうなって冒険者なの?

 服装は乗馬服をエレガントにした感じだし、貴族隠してない!!


「リンクです。よろしくです」

「リュカ、よろしく」


 私たちは冒険者登録は偽名にしてる。家名も使ってない。お貴族案件もほぼ避けて来たのになぁ。


 アガルまで無難に過ごして離れるしかないな。


 

 カボスさんがふくふくしい手で握手を求めて来た。

「いやぁ今回は道中華やかになって嬉しいよ」

 居丈高い感じがない良さげな主人でこちらこそラッキーだよ。


 結局前方をジュリーさんたちが交代で、後方は私たちがってことになった。


 あっちに絡むのは最低限で済みそうだし、私たちも2人でいられるから良かったかも。

 

 まだ積み終わってなかった荷物を積むのを手伝ってやっと王都アンシェルを出られるぜ~。



 城壁を越えて徐々に視界が広がっていく。畑、草原、時々土剥き出しってね。

 まだパスクの町までは開けてる方。


 休憩を挟みつつ進む間、ジュリーさんはちゃんとお仕事が出来てるってわかった。格好はともかくちゃんと経験を積んできてる感じ。急に冒険者になった訳じゃないらしい。

 途中ちょっと下級魔物がちらほら出たけどサクッとヤって危なげなく進んだ。


 あちらも訳ありだからか進んで交流を図ってくる事もなく。


 パスクの町ではカボスさんが宿を取ってくれて、名物の果物や肉串を買い込んでから、ゆっくり休んだ。

 

「いやぁ順調順調。ありがたいねぇ」

 カボスさんのご機嫌な声に迎えられ出発。

 

 これまでよりは道が荒れていくから若干キツくなる。骨に染みる感じ。

 まぁ貧乏なので慣れてるんだけどね☆


「リィン、ゴブリンがいる」

「単体?」

「12体」

 ルカの探知に引っかかったのは雑魚扱いなゴブリンだけど数が結構いるな。

「範囲内に集落は出来てる?」

「範囲内には確認出来ないけど少し奥にまだいる」

「とりあえず来てる分だけ行くよ」


 ユーリオさんに馬車を止めてもらってから応戦する。

 ゴブリンは素材が取れないしお肉食べれないから嫌い。耳が討伐証明ってヤになるわ~。


 燃やすと証拠が消えちゃうからエアカッターで応戦。

 マグナムさんの動きも早い。良い筋肉してる~。ジュリーさんも綺麗な太刀筋を見せてくれる。

 すぐに戦闘終了になった。


「これは集落を探して殲滅すべきですわ」

「お嬢。ダメだ」

「野放しにしたら近くの人々が危険ですのよ」

 2人で揉め始めてしまった。


「僕たちは護衛できている。討伐では無い。依頼人を安全に予定の場所まで連れていくのが仕事だ」

「そう、ゴブリンの集落にいくなら人数も足りない。アギルのギルドに報告するのが最善だよ」


 ジュリーさんは納得しかねる顔をしてるが後数時間、馬に頑張ってもらって進むしか無い。


「ルカ、これ討伐依頼出たら参加する?」

「いや、帰るの優先しよう。あの2人のそばにいるのダメなんだろう?」


 ルカには、転生のこと、乙女ゲームのことは伝えてあって。信じてもらえないかもって悩んでたのに、行動がおかしいからなんか変なのはわかってたって。


 変って。


 ただのモブなのに気にしすぎかなって思ったりもしたけど、何事もなく過ごすなら心配事はない方が良いもんね。


 ジュリーさんは一回休憩した時も不服そうだった。知ったこっちゃないのでルカと2人近くを警戒しつつお茶飲んだ。

 あ、薬草ゲット。


 


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