とある猫の人生

矢斗刃

とある猫の人生

俺は猫と呼ばれているにゃー。

そしてこの公園の主にゃーごろ。

公園で今日も日向ぼっこにゃー。

最近は木のベンチの上で寝るのがマイブームなのにゃー。


隣には今日はマイスイートネコーもいないけどにゃー。


「にゃー。」こういう日もあるかにゃーと大きな欠伸をして丸くなる。

「う、むにゃむにゃ。」と顔を掻いてそのまま寝てしまった。


次に起きれば誰かの膝の上にいる。

誰だろうか?と見上げると人のお婆ちゃんと言う生き物だった。


「にゃー。」ベンチで寝るのがマイブームと抗議する。

「猫さん、それはごめんなさいね。」と謝ってくる。


猫語が通じたのだろうにゃー?

猫は首を傾けた。


「ふふ。」と笑いながら我をなでてくる。

そんな行為に嫌がるわけじゃない。


たまに遊びに来る子供の奴よりは、なで方はちゃんとしているかもしれないにゃ。


そのなで方は不快ではなかったにゃ。

そうしてしばらくなで続けられる。



「猫さん、私ね。もう長くないの。」と語りかけてくる。


猫は黙ってその話を聞いてやる。

なで方に寂しさを感じる。


猫の俺も別れを何度も経験しているからにゃー。

わかるにゃー

人間たちに連れていかれたり・・・

あの箱の物体の上に乗っかってどっかに行ってしまった奴までいる。

別れた奴等の事を思い浮かべれば切りがない。


そして罪づくりな猫なのさ!と瞳をキラーンさせた。


「だから猫さん。私の家族の事お願いできないかしら・・・」


その顔は人間として見たことのない顔だった。


「にゃー。」気が向いたらにゃーとしか答えられない。


所詮根無し草な俺だにゃー。ワイルドに行くにゃー。


「ふふふ。」と笑っている顔だ。


「なんでかわからないけど。貴方なら皆を笑わせてくれる気がするのよね。」


「にゃにゃ」なんだ失礼なこと言いやがってにゃ!と少し怒ってやる。

「ごめんなさい。他に頼れる人がいないのよ。」と猫の俺と目を合わせてくる。


「にゃー。」わかったにゃ!ともう投げやりに返事してやった。


「そう、じゃあ行きましょうね。」


「にゃ!」俺は乳母車に放り込まれ鍵を閉められ連れていかれる。

手際がいい、まるでこうなるのがわかっていたかのようにゃ!


「にゃにゃにゃ!」どこ行くにゃー。と大きな猫の叫び声。

俺の叫び声はこの公園に響渡ったはずにゃー!


それでも助けに来ないとは、公園の他の猫共の教育は間違ったかもしれないにゃ!



「にゃにゃにゃー。」猫の俺はこうなったら仕方ないと煮るなり焼くなりするにゃー。

乳母車の中で踏ん反り返る。


絶対隙を見て逃げてやるにゃーと決めてこの籠の中で揺られていた。



どうやら乳母車は止まって、お婆さんは俺を出そうとする。


今だ!猫の目が開眼したにゃー。


俺は思いっきりジャンプして、そのジャンプ力は猫リンピックがあれば世界を狙えるぐらいだっただろう。


俺はお婆ちゃんを飛び越えた。

よし逃げられることを確信したにゃー。


しかしそんな小細工は奴の前では無意味だった。

その女の子は俺を両手でキャッチしたのだ。


「にゃ!」と思わず叫んでしまう。


その顔の表情は二ヘラーと笑って恐い者だった。

我が猫生の宿敵かもしれないにゃ。

俺はそんな奴に出会ってしまった。


「ねぇ、お婆ちゃんこの子誰?」と聞いてくるガキんちょ!

「その子はね、うちの子になったのよ。」と言ってくる。


「にゃにゃー。」と違う違うにゃーと俺は暴れる。


それをどんな風に勘違いしたのか。

「元気があっていい子ね!」と言って俺は連行されていった。


「にゃー。」助けてにゃー!とその叫びはもはや誰にも届かないのかもしれない。



風呂場でこの子供に洗われていた。


俺は洗われることになれていなくて何度も何度も逃亡を企てるが、この女の子に行く手を阻まれてしまう。

まるでがどう逃げるのかわかっているようにゃ!


最後には抵抗を諦めて、大人しくなる。


しかし、俺は諦めない猫にゃ!


この風呂場での激闘は負けてしまったが・・・脱走を諦めたわけではないにゃ。


しかし、目の前にある餌に釣られ、その誘惑に勝てはしないにゃ。

そして奴は最終兵器、猫じゃらしを繰り出してくる!


なんとそのコンボで今日の脱出を諦める他なかった。



「にゃー。」と力ない声を上げる。

がっくり俺は疲れて寝てしまったにゃ!



「ふふふ。計画通りね。」と笑うお婆ちゃん。

「何が計画通りなの?」そう聞く女の子。


「ああ、あの子はね・・・いい使い魔になるよ!」とそのお婆ちゃんは実は魔女だったのだ。


「へぇー。」とわかっているのか、わかっていないかの返事をする。

「あんたのだから、ちゃんと可愛がるんだよ!」と子供の頭を優しくなでてやるのだった。


「うん。」と元気よく返事をした。

「いい子だね!」と再びなでてあげる。


そうして彼女は俺と言う使い魔を得たのだった。


もちろん俺は全力で逃げ回ったにゃ・・・そのかいもなく。

どこにいてもなぜか俺の場所がわかっているようで・・・俺を捕まえて連れ帰るにゃー。


それは実は魔女になるための最初の試練だったらしい。

俺を捕まえる事が最初の試練。

そして彼女が魔女になるための最初の一歩だった。



思えばこのお婆さん、一体年齢はいくつなのにゃ?

もうすぐ死ぬと言っていたが・・・彼女にとってはその時間は長いのではないか?

猫のはずなのにそんなことを考えられるくらい頭が良くなっている?


それはおかしな事だった。


たぶん、あいつ等が何か俺を改造したのかもしれない。

そう考えると恐くなる。

猫が青くなるってどういう感じなのだろうかきっと今、自分はそうなっているだろうにゃ。


猫はここに来たことを未来永劫後悔し続けながら、嫌々ながら、それでもなぜか離れることはできずに猫生を過ごすのだった。



「出来た!完成した!私の野望の一つがこの魔方陣だったの!」と俺に話しかけてくる。

「そんなもの完成させてどうするにゃ?」と俺は話せるまで成長することが出来ていた。


「ふふん、それはね。」と俺を捕まえ魔法陣の中心に投げる。


「にゃ!」とっさの時はまだ猫語が出てしまうのだ。


「さあ、今こそ本当の姿に!私が望む姿に!彼の猫を人へ!」


その言葉と共に俺は人型へとなっていく。これは一体?と戸惑う。


「ふふ、やっと会えたわね!私のダーリン!」と抱きついてくる女。


「はっ?何言ってんにゃ?」

「これから貴方は私の彼氏兼、使い魔だからね!」


俺は頭を抱えた。


これは一体どういう事なんだ!


嬉しそうにしているご主人様を見ながら・・・俺の次の人生が始まったようにゃ。


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