第P話 カラメル訛りの男
前回のあらすじ
山間部の山田さん老夫婦と運輸省職員ジョン・スミスは地球外の人食いプリンの攻撃を受ける。しかし、山田さんから授かった木匙『スプーン』で反撃、怪物の撃退に成功した!
一方……日本には杏仁豆腐、ドイツにはババロア、イタリアにはパンナコッタ、スコットランドにはブランマンジェが迫る中、ジョン・スミスの勤め先、運輸省にプリンバケツ型宇宙船が迫っていることを、ジョン・スミスにはまだ知る由も無かった……
「まだ続くのですね」
いえ、まだここまでしか思いついてないわ。
「しかしかなり良い出来では?その、ちょっとパクリっぽいとこを除けば」
いやん。レベッカはよしてよ。
「おべっかですか?」
パクリとオマージュの違いとは!
「パクリとオマージュの違いとは?」
楽するためか、より良いものを作ろうとするためかという目的の差異よ。
「それで……ここからどういう展開にするつもりですか?」
当然、プリンバケツからプリンの先兵が降り注いで国交省を占拠しようとするのだけれども、彼らには目的があったのよ。国交省が行っている『オバサン専用道路計画』を潰すことよ。プリンを作れるオバサンには、なるべく家にいてほしいかった。それがプリン達の真の狙い。
しかし国交省の入り口は計画第一弾としてオバサン専用道路化されており、プリンたちはオバサン達に轢かれてしまうの。
「なんかどこかで見たような話になってまいりました」
しかたなく正面玄関ではなく屋上から侵入しようとするも屋上庭園でゲートボールを楽しんでいるオバサン達が。
さらに妥協し、プリン達の長、プリンシパルは通信での交渉を試みるもプリン訛りが酷くて全く伝わらず、誤解の果てにプリンも一緒になってゲートボールをすることに。かくして宇宙に平和が訪れた……。
「プリン訛り?」
子音が破裂音に置き換わってたり、一部の有声音に水音が混じるの。
「こんな感じでしょうか? Vhat's da puck!? Vhat's vappening!?」
上手い上手い。もっとやってみて。
「Vhat's da puck!? Vhat's vappening!?」
……そうじゃなくて、別パターンが聞きたいの。
「ヴぉしもこんな゜時に彼がぴてくればら…」
うーん、これを文章で表現するのは無理ね。
「vI Phink so doo. pI avree to dyou」
っていうかこれアヒルの声よね。
「Ovcorse, I can ude "Duckshpeake"vwell」
……プリン語はもういいのよ。
「失礼、止めるタイミングを失していました」
しかし、かなり良い出来だと思わない?
「ほぼ丸パクリなことを除けば」
実はその……少々言いにくいのだけれども
「耳打ちなさってください」
ゴニョゴニョ……ゴニョゴニョゴニョゴニョ……
「ほう! なるほど! 二次創作ですか!」
声が大きい! 何のために耳打ちしたと思ってるの!
「何のために耳打ちなさったのですか?」
……そういえば自室だったわ。
「場所にはあまり意味はありませんからね」
それで、このあん肝星団帝国だけれども、乳製品艦隊以外は本編未登場なのよ。
「なるほどそれで」
例えば、植民地治安維持食ミンチ部隊とか!
「……それが言いたかっただけですね?」
うんざりするほど配給されるランチョンミートと住人との融和を描くのよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
場所は同じくセリーヌお坊ちゃまの自室。なんと30分に及ぶ激闘からユニヴェルスが帰ってきたのです。
え?私ですか?私は三人称視点です。場に出てる登場人物が3人以上になったので急遽雇われました。また人数が減り次第撤退いたします。
「あら、ユニヴェルス。体調は大丈夫なの?」
少し軋む音がむしろ格調高くすら感じる木の扉の開く音を聞いてセリーヌは振り向いた。
「いえ、長引いたのはオバチャンに絡まれたからでございまして……それより、途中から私の事すっかり忘れてましたね?舌の根カサカサでございます」
思わず気まずそうにするセリーヌ。
「……思わず話がカツレツしてしまったので」
「白熱?」 バッコはすぐに訂正した。
「しかし、坊ちゃまはヒッキー気味でございますから、誰かと喋るというのは大事でございます。バッコ、ご苦労であった」
「有意義だったようで何よりでございます」
バッコは真ピンクの服に似つかわしくない丁寧な所作で軽く頭を下げた。
と、ここで坊ちゃまが切り出した。
「カツレツを?」
いえ、夕食時にはまだ少し早く、今切り出したのは話である。どうやらユニヴェルスに訊いてみたいことができたようだ。
「ユニヴェルス、ユニヴェルスもプリン訛りやってみなさい」
「プリン訛りってあのプリン訛りでございますか? えー……コホン……」
「私もやらされましたが、中々に困難でしたよ」
一つ咳払いをした後、ユニヴェルスはやや芝居がかったような身振りとともに口を開いた。相当無茶をしているようだ。
「プフェー……お坊゜プゃマ、ぴふぁぱヴぁおヴぉぷしぴ……」
「なんて?」
思わず聞き返した坊ちゃまと一方、笑いをこらえるバッコ。
「そもそもプリン訛りはおばあちゃんと相性がいいように作られているのですよ」
「おばあちゃんになりなさい」
「そんな無茶な」
小馬鹿にされた空気を察知してユニヴェルスはすぐ恥ずかしそうに普通に答えた。
「食堂にミルクプリンを確保してあります。……3人分」
「なんというっグッドタイミング!?」
「しかもおばあちゃん作ですよ」
「行きましょう! プリンが乾かぬうちに!」
おやつに心沸き立ち、駆け足気味の坊ちゃまが発したその号令とともに、坊ちゃまを追いかけるようにして、3人は部屋を後にするのでした。なんとおめでたい。
・・・・・・それでは、私も失礼します。さっそく次の現場へ行かなければなりませんもので。
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