遊園地

「ふあ〜…」


車の中から出た柚木は1つ大きな欠伸をした。


「ありがとうございます…その、色々と」


場所はもう遊園地に着いていた。俺は裕二さんに車の中のことについてお礼を言っていた。


「気にしないで。頼りたい時にいつでも頼ってね」


裕二さんは俺に笑顔でそう言ってくれた。いい人すぎるな…


裕二さんはそれだけを言い残すと「また迎えに来るから」と言い残して帰って行った。


「さぁ!今日は目一杯遊ぶよ!」

「…そうだな。行くか!」


2人で遊園地に入場した。


「…変わってないな」

「ほんとだー。懐かしいね」


小さい頃、柚木と来ていた遊園地は何一つ変わっているところはなく記憶のままそこにあった。


「…柚木の苦手だったジェットコースターから乗るか?」


俺は少し意地悪に笑いながらそう言う。


「うっ…い、いいよ!もうそんなの苦手じゃないからね!」


そう啖呵をきった柚木と共にジェットコースターに乗った。乗り終えた後、柚木はベンチで1人項垂れていた。


「まだ苦手なままだったな」


俺は笑いながら柚木にそう言う。


「う、うるさいよ…うっぷ…」


柚木が少し落ち着くまで隣合ってベンチに座っていた。数分したら柚木は元の元気を取り戻した。


「…じゃあ次は緋月の苦手なお化け屋敷に行こうか」


柚木が先程俺がしていた意地悪な笑みを浮かべながらそう言ってきた。


「いいぞ」


苦手って…いつの話をしているんだ。この遊園地は子供の頃に来ていた遊園地だぞ?子供の頃なら怖かったお化け屋敷でもさすがに高校生にもなって怖いだなんて言うことは無い。ましてや1度入っていて朧気だが覚えているお化け屋敷なんて余裕だ。


「ゆ、柚木?居るか?」

「いるよ(*^^*)」


いきり立って入ったお化け屋敷は思ったよりも暗くて…めちゃくちゃ怖い。え、なにこれほんとに子供の頃に入ったやつと同じか?!絶対違うだろ!怖さの次元が違う!


「ほ、放って行くなよ!?」

「い、行かないよ…」


柚木が笑いを堪えながらそう言う。


「何笑ってんだよ!」

「だ、だって緋月があまりに怖そうにしてるから…」

「し、仕方ないだろ?!怖いものは怖」


そう言っている途中に上から糸で吊るされた生首が目の前に降ってきた。


「うわああぁぁ!!」

「ぶっ!も、もう無理!怖がりすぎでしょ!」


大声を出して叫んだ俺を見て柚木が爆笑している。


結局お化け屋敷の外に出れたのは入ってから30分経った後だった。


「も、もう絶対に入らない…」

「なんで?また入ろうよ」


ニヤニヤとした笑みを浮かべながら柚木がそう言ってくる。そんな柚木から逃げるように目を逸らした。そしてたまたま知り合いが目に入った。


「ん?あれ四条さんじゃないか?」

「え?どこ?」


柚木がキョロキョロと辺りを見渡す。


「ほら、あそこ」


そう言って俺は少し離れたところにあるベンチを指さした。


「…あ、ほんとだ」


柚木も見つけることが出来たのかそう声を出した。…気のせいだろうか?心做しか柚木の機嫌が悪くなったような気がする。


「ちょっと声掛けていこうぜ」

「…そうだね」


俺たちは四条さんに近づいた。


「四条さん」


俺がそう声をかけるとスマホをつついていた四条さんがこちらを見上げてきた。


「ん?お!比島君と美鷺さん!」

「こんにちは」

「…こんにちは」


俺たちは四条さんに挨拶をする。


「こんにちはー」


すると向こうも挨拶を返してくれた。


「奇遇ですね。四条さんも遊びに来てるんですか?」

「うん、そうなんだ」


さすがに誰と?なんて聞けない。もし1人で来ていたら…気まずいからな。


「彼氏と来てるんだ」

「あ、そうなんですね」


なんだ、ちゃんと彼氏と来てるのか。


「四条さん!」


それを聞いた柚木が大声を出した。


「うわ!ど、どうしたんだよ」

「み、美鷺さん?」


俺はびっくりして柚木を見て四条さんは困惑した様子だった。そんな俺たちに構わないで柚木は四条さんの手を両手でがっちりと掴み


「これからもよろしくお願いします!」

「よ、よろしく?」


本当に嬉しそうにそう言った。ど、どういうことなんだ?


その後四条さんと分かれた俺たちは夕方になるまで遊んだ。結局裕二さんに家まで送って貰ってしまった。


「ただいま」


俺はそう言いながら玄関を開く。すると中から父さんと母さんが出てきた。


「おかえり」

「おかえり〜」

「…2人とも帰ってきてたんだ」


…ちょうどいいか。2人に話をしよう。


「帰ってきて早速で悪いんだけど、2人とも俺の話を聞いてもらってもいいかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る