一章32話 二つの自我。

「おぉ~。視点と思考が二つあるってこういう感じなのか。言葉にするのは難しいけど、これで少しはシャルルの気持ちが分かるようになるな」

「ほんと、凄く不思議な感覚だね。癖でアイヴィスのときの口調にならないように、シュウ君のときは気を付けないといけないかもね」

「確かにな。アイヴィスのときならともかくシュウでその口調で会話するのは忌避感があって嫌すぎる」

「だよね。客観的に見ても、ちょっと気持ち悪いかな。ともあれ徐々に慣れてきたし、こうして自問自答せずに意識内で共有出来そうじゃない?」

「出来なくは無さそうだが、もう少し慣らしておこうか。程なくして拠点を移すつもりだし、それまでに違和感がある部分を修正していこう」

「そうだね、そうしようか。差し当たってやはり最初は身体情報からかな? とりあえず、シュウ君はそのまま裸でいて貰おうか」


 まず目につくとこと言えば、やはり男性器かな。間違いなく前世よりも一回りほど大きくなっているし、なんというか……ズル剥けだ。


 二十七年ほどの年月を共にしてきた相棒のことは未だ忘れていない。故に間違いなく俺の息子はまずまずだったし、仮性だったはずなのだ。


 ていうか男性時のアイヴィスの逸物ってこのシュウ君よりさらに一回り大きいし強固なんだけど、これが白人種の底力なのだろうか。


 いや、確か白人種は硬度はそこまで無いって聞いたことあるし、ふむ。此方はもしかしたら”日本男児の魂が宿った逸品”なのかも知れないな。


「アイヴィス様。何やら思考に耽っているところ申し訳ないのですが、絵面的にも非常に遺憾ですので戻ってきていただけると幸いです」

「おお、ラヴちゃんか。ごめんごめん、男にとって非常に重要かつ緊急の案件だったからつい夢中になってしまっていたみだいだ」

「なんかなし言いたかことは分かったが此方としたっちゃ、一国ん女帝になろうとしゃるーものが身内とはいえ、ヒトん目がある場所で男性ん股間ば凝視するちゅうとは流石に如何なもんかて思うばい?」

「お、おお。思わずシュアちゃんが素に戻っちゃうくらいは不味かったってことか。いや、申し訳ない」

「あ、あらあらぁ? どうして私まで裸にされているのかしらぁ?」

「え、だって優香さんは俺の嫁になるわけだし、身体の相性は確かめないと駄目じゃない? 正直言って、一番大事まであるよね?」

「で、でもアイちゃんの愛人でもあるしぃ、お姉さんも皆みたいにアイちゃんに操を立てたいなぁ~? なんて思うのよぉ」

「ゆ、優香さん……っ! ほら、ステイだよシュウ君。私の愛人には手を出させないからねっ!」

「いや、ほらも何も文字通り、シュウアイヴィス自身なんだが……?」


 優香さんって、実は結構乙女ちっくだよね。ラヴィニスとかシュアは元がアイヴィスであれば同等に見做してくれると思うけど、確かに客観的に見たら不道徳かも知れないね。


 それに、正直嬉しいんだよね。同じ存在なのに不思議だけど、何というか私—―アイヴィスを大事にしてくれてるように感じるというか。


 かと言って、別にラヴィニスやシュアがアイヴィスを蔑ろにしているとは思わないけどね。どんな私でも受け入れてくれるという安堵の極致というか、実家のような安心感というか、そういったものを感じるからな。


 蒼空ちゃん? あぁ、彼女はほら、ラヴィニスに命じられれば何でもしちゃいそうだから、そもそも私は関与出来ないと思うんだ。


「そ、そうだった……っ! それなら、うん。こっちならどうかな?」

「成程。確かにこっちはアイヴィスでもまだしていなかったな」

「そうそう。私がすると、壊しちゃいそうで出来なかったんだよね。良い機会だし、皆の後ろはシュウ君が貰ってよ」

「……良いのか? いや、自分だから良いのだとは理解しているが……」

「だってアイヴィスだけずるいじゃん? シュウ君も私なんだし、苦楽は共有しようよっ! ねっ!」

「そうだな。—―良し。ではそうしようか。……ん? 何をしている? 優香さんは兎も角、ラヴィニスにシュア……蒼空ちゃんは痛くならぬよう、今のうちにきちんと準備しておきなさい」

「そうだよ。シュウ君の性能試験も兼ねてるんだから、もちろん協力してくれるよね? ね?」

「—―紫苑ちゃん。申し訳ないが入り口に立って見張りを頼む。手荒くするつもりはないが、俺のものでも少々キツイだろうから……な?」

「……分かりました。皆さんのご武運を、心より祈っておりますね」


 おや? 優香さんったら服も来てないのに、どこに逃げようと言うのかな? ふふっ。相変わらず天然お姉さんなんだから。


 ラヴィニスとシュアに至っては既に受け入れ態勢の準備を始めているというのに全く……往生際が悪いんだから。


 大丈夫。優しくするから。俺のことは怖いかも知れないけど、私のことなら大丈夫でしょう? ね?


 ふ、ふふっ。それに、そんなに怯えた目を向けたら駄目だよ? 俺みたいな偽善者は、そういった仕草に欲情しちゃうような人種なんだからね?


 ごめんね、優香さん。俺って奴は、可愛い女の子が快感で汚く喘ぐ姿がどうしようもなく好きみたい。私の愛人だし、許してくれるよね?


「……えぇっとぉ、蒼ちゃん? ど、どうしてお姉さんを羽交い絞めしているのかなぁ?」

「そういえばあーしの”初めて”ってこんな展開だったし、可愛い妹としては愛する姉にもそんな素敵な経験して欲しいなぁなんて思ったりして」

「—―ひぃっ⁉ あ、蒼ちゃんってば目が座ってるよぉ~っ! ごめんってばぁ~! お姉さんが悪かったから助けてよぉ~っ!」

「助ける? 優姉ってば変なの。あーしも凄く恥ずかしかったけど気が付いたら虜になってたし、優姉も一緒になろっ? ね?」

「や、やだやだぁ~っ! はしたないのは嫌なのぉ~っ! お願いアイちゃんっ! シュウ君を止めてよぉぉぉ~っっ!」

「—―うっ⁉ どうしようシュウ君。優香さんギャン泣きなんだけど、流石に可哀そうだから止める?」

「う、うーん。確かにちょっと可哀そうになってきたな。俺としてもは気が引けるし、今日のところは止めて置こうか」


 そういえば優香さん、どちらかというと声を我慢する方だったな。どうしても出てしまう場合は可愛らしくするように心掛けてたし、そんな健気な姿が愛らし過ぎていつも手心加えちゃうんだよね。


 反動なのか、妹の蒼空ちゃんにはかなりハードなプレイを強いてしまっていたけど、当の本人が意外とノリノリで答えてくれるから、こっちとしても割と容赦なく責め立てることが出来てたんだよなぁ。


 その結果毎度のように獣のような野太い嬌声を上げ、ラヴィニスや紫苑が満足するまで失神と覚醒を繰り返す王道ルーティーンに突入するのだ。


 優香さんとしては弄ばれる自身の妹の姿を見て自身の姿を重ね、恐怖したのだろう。俺が言うことではないが、絵的には相応にひどかったしね。


「というわけでシュア。俺は皇都に出向いて諸々の確認をしてくる。自慰に耽っているところ悪いが、優香さんのフォローは頼んだよ」

「—―っ⁉ じゅ、準備しろとおっしゃったのは貴方様のはずですが?」

「すまない。だが、今回は日を改める方が賢明だろう。よろしく頼むよ」

「……少々遺憾ですが、承りました」

「う、うぅ~。シュア様、ごめんなさいぃ~」

「アイヴィス様が悪いので、優香が気にすることではありません」

「その通りだよ、優香さん。怖い思いをさせて、本当にごめんね?」

「アイちゃん……っ! しゅ、シュウ君。お姉さん、次は頑張るからぁ」

「ありがとう。そして、本当にごめん。受け入れられたことが嬉しくて、少し舞い上がってたみたいだ」

「……あの。私はいつまで入り口を見張っておけば良いのでしょうか?」


 ともあれ、こうしてシュウ君は生誕したのだ。その運命は如何なるものか、神の……女神のみぞ知ることだろう。

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