一章27話 女神の遊技場。
「さてさて皆さん御覧じろ! これこそ我が皇国が誇るVIP専用ダンジョンである、『
「おおお~っ! これが噂の皇族限定のダンジョンってやつか!
思ったよりも明るくて見通しが良くてビックリなんだけどぉ~!」
「—―あ、こら蒼空っ! 昨日も言いましたが、ダンジョンは危険なので私の傍から離れないで下さい! ……全く。ケガしても知りませんからね?」
「—―ひぁっ⁉ ら、ラヴィニス様にハグされちゃった。し、幸せぇ♡」
「他人と距離を置きがちなあのラヴィニスが、アイヴィス様と私以外を心配するなんて悲しいような嬉しいような……中々に複雑な感情ですね」
「……私としても初日の蒼空姉さんは兎も角として、たったの三日ほどで優香姉さんまでもが手籠めにされてしまっていて、正直遺憾ではありますね」
「うぅ~。そんなの私だって思わなかったもん~! 気がついたらいつの間にかアイちゃんが目の前に居て~、そのままペロッて食べられちゃっただけなのぉ~!」
「え、そうだったっけ? 確か優香さんの方から滅茶苦茶にして欲しいって瞳を潤ませておねだりしてきたような……」
「あ、あれはシュアさんがイケないのぉっ! 何度も何度も焦らされて、ギリギリいっぱいだったんだからぁ~!」
「……おや。生意気をいうのはこの口ですか? 夜を待たずに塞いでしまっても、こちらとしては良いのですよ?」
あっれれ~? 何やら我が愛しの嫁二人が、またしてもイケメンムーブをかましちゃったりしてますか~?
そうですか。キリッとした美人であるラヴちゃんはバックハグからの囁き耳元ASMRで蒼空ちゃんのハートを鷲掴み、淑やかな美人であるシュアちゃんは無表情ながらも圧のある顎クイで文字通り優香さんを腰を砕きになんか行っちゃってる感じですか?
くぅ~。これだから顔の良い奴らは全くもうっ! 仮にこれを前世の俺がやったら、ドン引きされた上に警察沙汰だよっ!
い、いや。別に自分にそこまで自信がないというわけじゃなくて、それこそ飛びっきりのイケメンしか許されない行為だから嫉妬してるだけであって……兎に角なんだ! シンプルに羨ましいっ!
ていうか仮にその顔を俺が持っていたとしても、相応のメンタリティが無ければ出来なくね? 面とか関係なく凄いじゃん。
……良し。これ以上自己評価が下がる前に前から聞きたかったことを聞くことで話をそれとなく逸らしてしまおうか。
「全然脈絡はないんだけど、最近のシュアちゃんってばずっと丁寧語じゃない? 私としては訛りもたまには聞きたいんだけど」
「確かに言われてみればそうですね。何か心境の変化ですか?」
「……いえ、特にそういうわけではないのですが」
「な、なになに? そんな上目遣いでチラチラ見られると可愛くて愛でたくなってしまうんだけど……?」
「……やはり、アイヴィス様が原因でしたか」
「え、嘘。心当たり無いんだけど、もしかして傷つけちゃってたりした?」
「い、いえ。傷つけられるというよりも可愛がられ過ぎてしまうので、優香たちの前では意図して避けていると言いますか……」
「分かります。私も蒼空に見られている状況下では、少々意地を張ってしまいそうですので」
「あ、あー。そういうことだったのか。確かに私ったら歯止めが利かなくなって、一度無理させちゃったもんなぁ」
「勿論嫌なわけではないのですが、何分生死に関わる問題ですので」
え、そんなにっ⁉ 俺との性交渉って、下手したら死に至る可能性を秘めているってこと? 流石にやばすぎんか?
ちょっ? 二人があまりに脅すから蒼空ちゃんと優香さんがそれぞれの後ろに隠れちゃったじゃん! 大丈夫、怖くないよ?
あ、こら。紫苑ちゃんまで離れようとしないの! 流石の私も慣れたとはいえ、危険なダンジョン内でそういう行為とかしたりしないからっ! え、信じられないって? それはちょっぴり傷つくなぁ。
今回も前回もただただ据え膳を美味しく頂いただけで、別に悪いことなんてしてないのにさ。
私ってば運だけは天元突破してる女だし? 降って湧いた幸運には全力で乗っかるというのが、唯一信じてるオカルトだから。
運が良いと自覚したその瞬間に運命をも定められる。そう言っても過言ではないと、数多の実績による統計学から結論づいているのだよ紫苑君。
「(例えば――)あ、危ない紫苑ちゃんっ! —―紅華一刀流一ノ型『紅一閃』っ!」
「……あっ。あ、ありがとうございますアイヴィスさん」
「大丈夫、気にしないで? どんなことがあっても私が紫苑ちゃんを守るからさ――キリッ!」
「……台無しですよ、アイヴィス様」
「それと紫苑様。アイヴィス様のおっしゃる通り、何も気にしなくて良いですよ?」
「……で、でも私の不注意で迷惑をかけてしまったので」
「紫苑様。シュアの言う通り、全く気にしなくて大丈夫ですよ? このダンジョンの別名は”
「――ちょっ⁉ ラヴちゃんもシュアちゃんも酷くない? 確かに私にとって有利過ぎるとは思うけど、せめて格好くらいは付けさせてよっ!」
「紫苑様には、ありのままのアイヴィス様を好いてほしいので」
「まさにラヴィニスの言う通り、この残念な感じがアイヴィス様の良いところですからね」
「……そうですか。そういうことでしたら、私も気にせずに行こうかと思います」
むむむっ。ポンコツで悪う御座いましたねっ! ……全くもうっ! 本当に最近の二人は遠慮ないよねっ! 悪い気はしないけどさっっ!
それと”言う通り”の連打も割と圧あるから止めな? 同調の意思を示すのには確かに有用なのかも知れないけれども。
ついでに紫苑ちゃんも素直なのは美徳だとは思うけど、二人の意見を鵜呑みにしないでね? 私だってちゃんとしてるときはしてるからね?
しかしなんだ。本当にこのダンジョンは私のためにあるようなものだね。ここまでくると俺が皇女としてこの地に転性したのって、もしかしたらこのダンジョンに引き寄せられたからなのかもと勘ぐってしまうほどには良く出来過ぎている気がするわ。
まぁ仮にそうだったとしても基本的なスタンスは変わらないけどね? 自他ともに認めるほど高い素養のあるLUCK値を武器に生き方の戦略を練るのは的を得ているし、主幹となる一本があるという強みはそれこそ何物にも代え難いものだからな。
「ぐぬぬ。言いたいことがないわけじゃないけど、確かにその通りだから安心して全てを任せて欲しいかな」
「それはつまり、アイちゃん様が居れば百人力ってこと?」
「確かアイちゃんってばぁ、LUCK値が天元突破してたわぁ」
「はい。参考までにアイヴィス様の武器と私の武具はこのダンジョン原産なのですが、控えめに言ってどちらもレジェンド級に当たる逸品です」
「……なるほど。アイヴィスさんと居れば、私たちにもその恩恵が受けられるということですか」
「加えて言えば、アイヴィス様の武器が一階層で出会った最初の魔物のドロップ品で、ラヴィニスの武具はその階層のボスのドロップ品として一度に一式で出現したというのが正確な情報ですね」
「それはつまり、私たちのLUCK値も影響をしているということですか?」
「そうですね、まさに蒼空さんの言う通りです。ただ、あまり心配はないかと思いますよ?」
「それってシュアさんもしかして、アイちゃんの気分次第でドロップ率が変わるってことで良いのぉ?」
「むっ。流石は優香さん、油断なりませんね。ここはシュアに便乗して、私も優香さんを分からせた方が良いかも知れません」
「うぅっ。確かに戦っているラヴちゃんをもっと見たいなって言う邪な考えはあったけど、どうしようもなかったんだもん」
うぐぅ。そんな目で見ないで欲しいな。私としても意図してやった訳じゃないからそうだと思って無かった訳だしさ。
何度か経験するうちにそういうものなんだなということが分かって来たけども、今回はレベル上げだけだから関係ないしね。
え、もしかして魔物すら出てこないとかある? いや、でも今は満たされてて特に邪な感情はないはずだから大丈夫だと思う。
あ、待って。これ多分何も考えない方が良いやつだ。……よし。心頭滅却、煩悩退散。修行のつもりで挑もうではないか。
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