一章21話 最後の晩餐。
「さてさて皆さま御覧じろ。お風呂もたっぷり堪能して頂いたところで、本日のメインである”豪華絢爛海鮮祭り”を開きたいと思いま~すっ!」
「うわぁぁぁっ! お、お、お寿司だぁぁぁっ! しかも身がおっきくて新鮮そのものだしぃ~!」
「ふ、船盛も凄いわぁ~! ご、豪華客船みたいにキラキラしてるぅ」
「……茶碗蒸し、とても美味しそう。わぁい」
「ふふっ。いっぱい食べてね? どの品もセーブルが仕入れてくれた逸品だから、ほっぺが落ちること請合いだよ!」
「「「いただきま~す!」」」
「料理人の腕が宜しいので。私はそのお手伝いをしただけに御座います」
「お、お、美味しぃぃ~! う”ぁぁ~、お、美味じいよぉぉぉ~!」
「お風呂で頂いた品も美味しかったですが、こちらも最高ですねぇ」
「え~! 優姉お風呂でもお刺身食べてたの? ずるい! あーしも食べたかったぁぁぁっ!」
「……茶碗蒸し、とても美味しい。甘酒も、とても美味しかった」
「うわぁぁぁん! 二人とも謎にマウント取ってくるじゃん! あ、あーしだって負けないし! 今からその遅れを取り戻してやるしぃぃぃっ!」
「あ、蒼空ちゃんってばもう。そんなに急いで食べたら咽ちゃうよ?」
「うぎゅっ⁉ ん”っ! んん”ぅ⁉ い、息がぐるし……い」
「あぁっ⁉ ほら、このお水飲んで? ゆっくり……ゆっくりね?」
あぁ、なんかこういう騒がしい食卓も前世ぶりだなぁ。よく鈴音が俺の食べてるものを横取りしてきたっけか。
その代わりにより良いおかずを分けてくれたり食べさせてくれたりしたから実質プラスだったけど、今思えばこういった家族っぽい雰囲気を作りたかったのかも知れないね。
会えるものならまた会いたいものだけど、流石に異世界からじゃどうにもならないなぁ。親父や義母さんも元気にやっていると良いけれど……。
なんて、しんみりしている場合じゃないな。そんな家族になってくれる三姉妹を迎えている最中だし、蒼空ちゃんの背中もさすらないとだしね。
「……あ、ありがとうございますアイヴィス様ぁ。お助け頂き感謝致しますぅ」
「—―っ⁉ ちょ、え? 蒼空ちゃん、変なものでも食べた? いや、まさかセーブルがそんなの許すはずがないし……い、一体どうしたの?」
「……べ、別にどうしてもないですよぉ。た、ただそのぉ~、アイヴィス様があまりにも可愛らしくてぇ~」
「しゃべり方が優香さんと紫苑ちゃんのハイブリットみたいになってるけど……もしかして、緊張してる?」
「……だ、だってぇ。私みたいなモブがアイヴィス様のような超絶美少女様に献身的に世話を焼かれちゃうとか、もう絵的に申し訳なさすぎて無理よりの無理ですしぃ~。何よりあまりにも可愛すぎて直視できないと言いますかぁ……ら、ラヴィニス様の射殺さんとする視線も怖すぎますしぃ」
「あぁ。うちのラヴちゃんがごめんね? 何か滅茶苦茶してたでしょ?」
「……い、いえ。それこそ滅茶苦茶に良かったのでそれは――はっ⁉」
「そ、そうなんだ。いや、それならば特に言うことは無いんだけど……」
「—―蒼空? それ以上食事中に下品なことをおっしゃるようでしたら、今晩は寝られぬことを覚悟して下さい……ね?」
「……ひぁぅ。ら、ラヴィニス様の冷ややかな視線とお言葉好きぃぃ♡」
あ、あれ? 蒼空ちゃんってばもう既に調教されたメス犬みたいにラヴィニスに従順になってるんだけど、これって大丈夫なやつかな?
頬は紅潮し、目はトロンと微睡んでるし……あれ? 駄目なのかな?
これもしかして、俺がナニするまでもなくまさかの
……俺の妻が一日掛からず女の子を墜としちゃったんですが、何か?
「ま、まぁいいか。仲良くやっていけそうだし安心したよ」
「うちの蒼ちゃんの業が深くてすいません~」
「……普段は真面目で勤勉なのですが、こういうところは玉に瑕です」
「う、うむ。どことなくシンパシーを感じる身としてはそういう面でも安心できるからむしろプラス要素かな」
「お言葉ですが、アイヴィス様の業はこのような可愛らしい程度に収まりませんからね?」
「まさにラヴィニスの言う通りですね。事実、私や彼女以外にも数名の犠牲者が出ていますから」
「ちょっ⁉ 二人して、私のことを何だと思ってるのっ⁉ 全く。私が心の優しい皇女様だったから良いものの、他じゃ不敬罪に相当するからね」
「あらあらぁ。やっぱり三人はとても仲良しさんなんですねぇ」
「……一見しただけではどちらが優位者なのか、判断が難しいですね」
「仲の良さだけで言えば、君たち三姉妹とそう変わらないと思うけどね」
やっぱりこの三姉妹とはシナジーが合うな。会話のペースもそうだけど、お互いの距離感というか、価値観が限りなく近いのかも知れぬ。
より分かりやすく言えば、”数居るその他大勢よりも、少数である身近な存在を何よりも優先しがちである”とでも言ったところかな。
過酷だと認識しているからこそ近しい身内を最優先し、どんな状況下になろうとも決して離れようとしない。俺はそのことを悪いとは思うことなど出来ない。
ま、俺が名ばかりの皇女であるという事実はそういった側面を捨てきれないからなのだが、前述の通り反省していないので意味がないのだ。
「で、でもアイヴィス様は、ラヴィニス様とシュアさんの旦那様なんでしょ? あーしらも仲は良いけど、流石に夫婦には叶わないと思うしさぁ」
「そう? 所見だけど、”ラヴちゃんの手で整えられた蒼空ちゃん”を”シュアのマッサージを受けた後の優香さん”と”甘酒を飲んだ紫苑ちゃん”の前にそっと置いたら……きっと美味しく食べてくれると思うんだけどなぁ?」
「ま、まさかそんな。確かにときどきボディタッチ過度かなとか思う時もあったけど、さ、流石に実の姉妹に発情なんてしないっしょ? ねぇ?」
「「…………」」
「……ね? 合ってたでしょ? ラヴィニスとシュアもたまに獲物を刈る狩人のような視線を成人前の私に投げかけてきていたし、そういうの分かるんだよねぇ」
「「…………」」
「あ、アイヴィス様? まさかの事実に震えが止まらないんだけど、あーしってば実はこの目の前に並ぶ美味しそうな料理よろしく……今晩食べられちゃったりしませんか?」
「あははっ、どうだろうねぇ。少なくとも、蒼空ちゃんにお願いしようと思ってた『異界通販』は後日にした方が良さそうかな? ふふっ」
「あ、あわわっ。さ、流石のあーしも怖いというか、や、優しくして欲しいというか……ていうかあーしこう見えて経験ないし、よく分かんないぃぃぃ」
「ほほぅ。蒼空ちゃんは”処女”なのか。……これは良いことを聞いたな」
「……あれ? もしかしてあーし、自分で逃げ道を失くしちゃったりしましたか?」
紫苑ちゃんは確定していたけど、やっぱり優香さんも蒼空ちゃんのことを性的に見ていたのか。
姉妹を思う愛情にしては少々重い気がしていたし、そもそも『好感可視』という分かりやすい指標がある俺としては一目瞭然なんだよなぁ。
しかし、そうか。蒼空ちゃんってば処女なのか。このようなときに合理的な思考などすべきではないのかも知れないが、現状新たなスキル習得条件のひとつが”生娘を立派な淑女にする”という客観的な事実がある以上、このチャンスを棒に振るのは些かもったいないというか、ただの阿呆である。
あくまでも予想の範疇を超えないが、既にテイム済みであるラヴィニスによる調教が蒼空ちゃんに有効にしか見えない現状から察するに、”スキル的に上位者である俺が彼女の純潔を貰うこと”で『異界通販』……その下位互換であるなにかしらの有用なスキルを手に入れることが出来ると思うんだよね。
ふむ。ここは蒼空ちゃんには悪いが、皆の人柱になって貰おうかな。何が起こったとしても責任は必ず取るし、何より本人が怖がりつつも期待しているみたいだからね。
ついでに優香さんや紫苑ちゃんにも大きな恩を売ることが出来そうだし、無事に二人とWINWINの関係を築けそうで何よりだよ。
いやぁ。本当に皇女で良かった。こんなの日本じゃ無理だったし、地位と権力ってこういうときにこそ使うべきだよなぁ。はぁーはっは!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます