幕間01話 ラヴィニス01。

「……ラヴちゃんって、本当に私のこと好きだよね?」

「――ふぇっ⁉ い、いきなりどうされたのですか? それはその……す、好きですけど……」

「リドリー様がこっそりと教えて下さってね。『人見知りで無口な娘が、アイヴィス様のお話だけは饒舌に話すのですよ』とか、色々ね? ……ふふっ」

「あぅぅ……。お母様ったら余計なことを……」

「ふふっ。ラヴちゃんにそんなに思って貰えるなんて、私は幸せ者だなぁ」

「くぅぅ……。は、恥ずかしいですアイヴィス様ぁ」


 アイヴィス様が成人なされたお祝いにお酒を飲みたいとおっしゃられたので、早々に祝賀会を切り上げて私室で晩酌を始めたのは良いのですが、ほろ酔いのアイヴィス様がいつもよりさらに蠱惑的過ぎて困ってしまいます。


 こういうときに頼りになるシュアも気を利かせたのか率先して部屋の警護に当たるといって扉の向こうに行ってしまいましたし、抵抗しようにもアイヴィス様の一挙一動に心身が揺さぶられて、直ぐに何も考えられなくなってしまうのです。


 ただ隣に座られてらっしゃるだけでも私の心臓は脈打ってしまうというのに、膝にそっと手を添えられてしなだれかかるように肩に頬を乗せるなんて可愛すぎてずるいですし、加えて更に上目遣いで覗き込むとか反則過ぎて反則というか、神経という神経が過敏に反応してくらくらして、今にも気を失ってしまいそうです。


 なによりもたちが悪いのが、私がそうなってしまうのを完全に理解したうえで実行して、したり顔でまっすぐ目を見て笑いかけてくるところでしょうか。


 はぅぅ、心臓が痛いぃ。恥ずかしいけど心地良いし、頭はふわふわして思考は纏まらないのに身体からはアイヴィス様の温もりが直に伝わって来て……。こ、このままだと私、アイヴィス様に壊されてしまうかも知れませんっ!


「ラヴちゃんったらもう。お顔が真っ赤っかだよ? 可愛い♡」

「あ、アイヴィス様! か、勘弁して下さいませんか?」

「だーめ♡ 今日はラヴちゃんをたくさん褒めて褒めていい気分にさせて、最高の初夜を演出しないといけないから……ね?」

「しょ、初夜……ですか? それはその、そういうこと……ですよね? あ、あぅぅ」

「そうだよ? ラヴちゃんと私は今日結ばれるの。これはもう決定事項だから、ラヴちゃんに拒否権はありません」

「そ、そんな……」

「……嫌?」

「――ま、まさか! そんなこと、あるわけがございませんっ! アイヴィス様に触れられる度にいつだって私は――はっ⁉」

「……声おっきぃ♡ ラヴちゃんったらもう。そんなに私としたかったの? 嬉しいな」

「くぅぅ。あ、ああアイヴィス様がか、可愛すぎてつらいぃぃぃっ!」


 あ、あわわわわ。あ、アイヴィス様が私に抱き着いてぎゅってしてくるぅ! 胸の隙間から私を覗き込み、天使のような笑顔で誘惑して、私の心臓に矢をつ、突き立てて来るのぉぉぉ……っ!


 ま、ままま、待って私、興奮して動機が止まらないっ! お酒もアイヴィス様から一口頂いただけだから酔ってるはずなんてないのに、ぜ、全身の毛穴からあ、ああ汗が噴き出てきてぇ……!


 あ、あぁぁっ⁉ アイヴィス様が私の匂いを嗅いでるっ⁉ は、恥ずかしいぃぃ。ゆ、湯浴みもまだだというのにそんなっ!


「……ふふっ。ラヴちゃんの匂いがする」

「――っ⁉ か、嗅がないで下さいアイヴィス様ぁぁぁ」

「やだ。ラヴちゃんの匂い嗅いでると落ち着くの」

「――で、ですがそのっ! ま、まだ湯浴みもしていませんし……は、恥ずかしいですぅ」

「……んっ。ちょっとしょっぱい」

「――はぁぅっ⁉ あ、あああ、アイヴィス様っ⁉ い、いったい何をされて――っ!」

「マーキング♡ ほらみて? ラヴちゃんのお胸、私のキスマークついちゃった」

「――はぅあっ⁉ ま、ままま、待ってくださいアイヴィス様! し、心臓が破裂しそうで……このままだと死んでしまいますぅ」

「ふふっ。そんなに慌てて、ラヴちゃんは本当に可愛いなぁ♡」


 し、思考が纏まらないぃぃ。身体が熱くて、心臓の音が煩くて、アイヴィス様が可愛すぎて、こ、このまま滅茶苦茶にして欲しいぃぃぃ……♡


 恥ずかしいのに嬉しくて……もどかしいのに気持ちいい……。


 ふにふにと私の胸を揺らすアイヴィス様の御手は可愛らしくて、お顔はまるで玩具で遊ぶ子供のように無邪気なのに、言葉はまるで魔女のように妖艶で、手管はまるで熟年の職人のよう。


 あぁ……このまま私、溶けて無くなってしまうのかな。身体に力が全く入りませんし、意識もだんだん遠くなって来ました。


「――えいっ!」

「――ふわぁぁぁっ⁉ あ、アイヴィス様? そ、そこはダメ! そこは――ふぅぅんっ⁉ だ、だめですぅ……」

「ラヴちゃん今、寝落ちしそうだったでしょ? だから、お仕置きなの」

「はぁぁぁ……んっ。ご、ごめんなさい。で、でも私その、心地よくて……」

「確かにココ、服の上からでも隠せないほどにカッチカチになってるね? そんなに気持ち良かったの? 嬉しいな♡」

「んあっ⁉ あ、アイヴィス様! はぁんっ⁉ そこを指で弾くのや、やめて下さいぃぃ」

「そこって、ココ? へぇぇ。こんなにおっきなお胸でもココは敏感なんだ? それとも、ラヴちゃんがえっちなだけなのかな?」

「ふぅぅんっ⁉ く、クリクリするのもダメですっ! それに、私はえっちなんかじゃ――あ、あっ? ま、待って下さいアイヴィス様。このままだと私、は、果ててしまうかも知れません!」


 わ、わわ私の乳首……どうなってしまったのでしょう? アイヴィス様が触れる度に背筋に電気が走るような快感がくるのですが、もしかしてこ、壊れちゃいました?


 ひ、ひとりでしてるときはこんなことにならないので、きっとアイヴィス様が何かしているに違いませんっ!


 だって私、えっちじゃありませんから! ち、乳首を弄られてい、イってしまうほど、い、いい淫売じゃありませんのでっ!


「ふふっ。ラヴちゃんはえっちだなぁ。乳首で感じちゃうの可愛い♡ それもまだ服の上からなのに、ね?」

「うぅぅっ。そんなに顔を覗き込まないで下さいぃぃ」

「だーめ♡ 今日はラヴちゃんの全部、見せてもらうからね?」

「あ、アイヴィス様? ど、どうして押し倒すのですか? そ、それにお顔が近いのですが……?」

「そこにラヴちゃんが居るから、かな? せっかくだし、ファーストキスでイって貰おうかと。私という存在を、ラヴちゃんのより深くに刻み込みたいからさ」

「ま、ままま、待って下さいアイヴィス様! そんなことなさらなくても既に私はアイヴィス様しか見えておりませんのでっ!」

「……ラヴちゃんさ。そんなこと言われたら、逆に止めてなんてあげられないよ?」

「えっ? ――あ、あんっ⁉ あ、あ、あ? だ、ダメですアイヴィス様! ら、ラヴィニスはもう、果ててしまいますっっ!」

「イって良いよラヴちゃん。――んっ」

「――ッ⁉ ん、んぅ――――――♡」


 う、嘘……。わ、私、ファーストキスで、イってしまいました……。それも唇がそっと触れるソフトなキスだったのに。


 あ、あああ、アイヴィス様のせいです。私、初めてのキスでイってしまう、はしたない女の子になってしまいましたっ!


 せ、責任を取ってくださいアイヴィス様ぁ。貴方の騎士は、ちゅーで果ててしまうえっちな騎士になっちゃいましたよ?♡


「……くくっ。おいおいラヴィニス。この程度で何を惚けている?」

「あ、アイヴィス様ぁ?♡」

「あぁ。確かに俺はアイヴィスだ。そして今から貴様を女にする初めての男よ」

「う、うぅ。あ、アイヴィス様ぁ。か、カッコいいですぅ♡」

「ふっ。それこそ今更のことだラヴィニスよ。さぁ、潔く俺を受け入れるがいい!」

「……はいっ♡ 来てくださいアイヴィス様。貴方様のえっちな騎士にその大きな愛情で、どうかご慈悲を下さいませぇ♡」


 あぁっ、なんてご立派なのでしょう! 可愛いアイヴィス様も良いですが、逞しく格好良いアイヴィス様も最高です♡


 もう、もう辛抱たまりませんっ! 私に、アイヴィス様一筋の不肖ラヴィニスにどうか、貴方様の無限大の愛と寛大なご慈悲をお与え下さいませっっ!


 あぁ、凄い。う、嬉しいですアイヴィス様。ラヴィニスはこれからも全霊をもって貴方様をお守りしお仕え致しますので、未来永劫ずっとず〜っとお傍に置いてくださいね?♡

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