第32話 普通


 日記帳をシールでデコレーションしていると、貼り付けたシールのクマが突然動き出し、小さな声で話し掛けてきた。


「今日はどんな一日だった?」


「うーん、有り触れた平凡な一日だったよ」


 非現実的な出来事にも関わらず、自然と会話をしている自分が居る。


「明日はどんな予定が入ってるの?」


「あんまり変わらない、普通の予定だよ」


「普通って何?」


「仕事に行って、喫茶店で休憩して、電車に揺られて、コンビニ弁当で夕食済ませて……」


「僕には分からないや」


 言うと、クマはピタリと動きを止めてしまった。

 今のはただの妄想だろうか。

 釈然としないまま手帳を閉じ、椅子から立ち上がる。


「明日は良い一日になる事を祈ってるよ」

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