荒廃した世界で君と笑う

狼の野郎

荒廃した世界で君は歌っていた


2156年、世界は終わりを迎えたようだった。


何でも突如として地球の生命のエネルギーがすべて消え去ったようだ。


その結果起こったことは草木が腐りはて、水の浄化作用は無くなり濁り続け、空気は穢れ続け、ガスマスク無しでは行動ができなくなり、食糧問題、水分問題と立て続けに起きた。


地球という、生命に溢れていた球体は今じゃもう見る影も無くなり塵と風しか舞っていない、人間社会は既に崩れ、文明は自然の前に太刀打ちができないほどに負けたらしい


「負けたとてそれでも全ての人間が負けたわけじゃない、そうこの俺がまだ負けてないからな!・‥‥悲しいな」


話す相手なんていないから状況整理なんてことしちまったぜ、はぁ…この砂嵐の中を歩くのは中々に応えるな、てか今向かっているコンビニとかに缶詰が置いてあればいいけど‥‥


「人間と幾らぐらい合ってないんだ?糞みたいな世だな、ほんと‥‥人間と会いてぇな」


地面を見れば砂が積り、建物はほぼ全てが廃墟と化し、ぼろぼろと所どころが崩れ落ちている


砂嵐の中、俺は黙々と目的地の位置へと歩き続けていたがその途中で奇妙な音を耳が拾った


はぁいつもの幻聴だろ?やってらんね、さてさて早くご飯でも見つけましょ~


「~~~~~~~~♪」


だが確かにその音は声に聞こえた、心は好奇心という名の感情に満たされ、俺は本来の目標を忘れ音のする方へと足を運んでいた


俺の足は止まらなかった、いや時計が数を数えるほどに俺の足は回転数を上げていた、砂を歩く速度はどんどん早くなっていた、それに伴い声は砂嵐に紛れていてもはっきりと聞こえるようになっていた


走って、走って、走って、走った


砂が散りばめられた地面に足を取られながら、ガスマスクで息がしにくくてもそれでも走った


音の主が自分に気づき、歌を歌うのを辞めた


「まだ人がいたのね」


それは冷たい声であった


「…‥‥‥‥‥‥‥。」


目の前の瓦礫の上に俺と年が変わらないと思われる少女がいた


俺は声が出なかった、、それだけで驚きだったからだ


その少女は薄い服装にガスマスクをしれいない恰好に加え、容姿に関しては少し幼さを残した、だけれども綺麗な可愛らしい顔であった


俺は一歩二歩とゆっくりと進み、一歩、一歩少女へと近づく、そして


「な、なに?ちょ、ちょっと、なんかいったらどうなの」


俺は少女の顔を確かめるように顔を触った、そしてその手で包んだ頬を右へ左へとスライムを動かすかの如く滑らかに動かした


「ちょ‥‥ひょ、しゃへれないでひょ、ちょ・‥‥あんた!」


少女はスパーンと遠慮なしの一撃を俺の頭部に食らわせた


「あいたー!!」


「あんた!初対面の人間になんてことをするんだ!!」


「あぁいやすまん、俺の精神が行くところまで行っちまって幻覚を生み出しちまったのかと思ってな」


「はぁ?‥‥‥‥‥‥まぁいいわ‥‥はぁ、あんたみたいな人間がまだいたなんてね、ちょっと驚きだわ」


「それはどうも、俺こそ人間に合えるとは思っていなかったから内心ではびっくりしまくりだよ」


「ふーん、そう。で、なにか私に用?」


「特に無いけど?」


「じゃあ何で来たのよ、用がないなら帰って頂戴」


「よいしょっと」


俺は少女の隣へと腰を下ろした


「ちょっと、あんた何してるのよ」


「暇だからな、数少ない生存者っていうよしみで少しだけ付き合ってくれよ」


「はぁ?何言ってるの?さっさといなくなって………………………………こいつ」


「いいじゃねぇか別に減るもんじゃないだろ?」


「はぁ」


彼女は不服そうな顔をした後、俺の事を完全に無視しまた綺麗に歌い始めた。


俺はそれを静かに聞いた。


砂と廃墟しかない中で少女の歌は確かに俺の耳に入ってきた。





日は下り月が上りそして隠れ、新たな日が昇ってきたところで俺はまた彼女の所へと足を運んだ


瓦礫の上にはやはり彼女がいた、俺はひらりひらりと手を振りながらのんびりと彼女の隣に腰を下ろした


「よ~また来たぞ」


「来るな」


「暇なんだよ、こんな糞ったれな世界なんだからさ、だからさ仲良くしようぜ」


「はぁ、来るなっていう言葉が分からない?」


「まぁ良いじゃないか、人には優しく行こうぜ?」


「‥‥‥‥‥‥‥はぁ」


俺はその様子を見てくすくすと小さく笑い、少女に一つ提案をした


「また歌を聞かせてくれよ」


「‥‥‥‥‥‥‥口を挟むなよ」


渋々ながら承諾した彼女はまた歌い始めた、歌い始めは俺の事を少しばかり気にしていた様子だが時間が経つにつれて彼女は徐々に俺という存在を消し、歌という物に没頭していった


彼女の歌はやはり綺麗だった、その声には心が乗っていた、誰にも聞かれるはずが無かった歌なのにそれでも洗練されていた


だがその歌は明るい歌なんてものではなく悲壮感がダイレクトに伝わってくるような歌だった


彼女の嘆きが彼女の寂しさが、彼女の気持ちが俺の心の中へと流れ込んできていた


俺はそれを静かに聞いた

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荒廃した世界で君と笑う 狼の野郎 @wolf0804

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