第49話

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翌朝シャーロットが登校すると、何やらスッキリした顔のロバートが待ち伏せしていた。

シャーロットは無視して通り過ぎてしまおうとしたのだが、流石にそうはいかないようだ。



「今まで君の気遣いを分かってれなくて済まなかった。」

「はぁ?何をおっしゃって……」

「あぁ、無理に話さなくて良いんだ。君の気持ちは分かっている。そんなに俺の事を想ってくれていたなんて嬉しいよ。でも、もう枕を濡らす必要も無い。もうすぐ分かるよ、楽しみにしておいてくれ。」

「はぁ……?」


突然早口でまくし立てられ、シャーロットは目を白黒させることしか出来ない。ロバートはこちらの話を聞く素振りを全く見せないのだ。ただ首を傾げる事しか出来なかった。丁度ロバートの背中越しにユリウス達が見えたので助けて貰えないかと視線を送る。



「それでその……君の名前を「おはようございます、シャル様。」」


ロバートの声に被せてきたのはロゼリアだった。

突然いつもとは違い、愛称で呼ばれた事に疑問を抱くが、彼女の事だ、きっと何か訳があるのだろう。ロバートの声は聞こえなかった事にして、これ幸いとそれに乗っかる事にした。



「それでは殿下、失礼致します。」


そう言ってシャーロットは、ロバートの横をすり抜けてロゼリア達の元へと向かった。


その後ろ姿を大人しく見送ったロバートは、「そうか、彼女はシャルという名前なのだな。直接聞けなかったのは心残りだが、まぁ良しとするか。」などと呟いていた。


それを横で聞いていたラーラは、激しく燃えるような視線をシャーロットの背に向けていたのだった。



一方、ロバートから解放されたシャーロットは先程の彼の『もうすぐ分かる』という言葉の意味を考えていた。一体、何の事だろうか?

まぁ、大した事ではないだろう。

そう考えたのが間違いだったようだ。





「余、ロバート・シーウェルは、シャーロット・フェロー二公爵令嬢との婚約を破棄し、シャル嬢を正妃に、ラーラ・ギーゼン男爵令嬢を側妃に迎える事とする!」




全く、頭が痛い。

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